マーケティング

BtoBマーケティングの戦略と実践(3)〜よりよい商談をうむためによい階段を設計する〜

BtoCとは違ってBtoBでは有効なチャネルが少なく、郵送によるDMやFAXによるDM、展示会、業界紙への広告出稿などしかプロモーション手段がありませんでした。

しかし、この10年ほどでインターネットが生活の中にまで入り込んで普及したことで、ほぼすべてのビジネスパーソンがスマホを1人1台持ち、検索エンジンやSNSで情報を得ることが当たり前になりました。

加えて、コロナによりリモートでの働き方が進み、10年かかると言われたBtoBマーケティングが、今大きく変化しています。その変化に対応するBtoBマーケティングについて学ぶことができます。

この記事でわかること

  • CVポイントの設計がマーケティングの成果を決める
  • CVポイントの階段をなめらかにすると、リード数、商談数が増える
  • 認知獲得からサービス導入まで、どこにボトルネックがあるかを把握する

CVポイントの設計がマーケティングの成果を決める

BtoBマーケティングを成功に導く上ではCV(コンバージョン)ポイントの設計が一番インパクトが大きい。

CVポイントの階段をなめらかにすると、リード数、商談数が増える

BtoB企業の経営者やマーケターの悩みのほとんどは、「リード数がたりない」「商談数がたりない」に集約される。これらの課題を抱える企業は、マーケティングの階段設計の途中に飛躍があることが多い。

リード数や商談数を増やしたいなら、見込み客が不安感なく、楽に登れるように、合間にサービスの操作説明会や具体的な事例共有セミナーなど、より細かいステップを儲けることが必要なのです。

SaaS企業のWEBサイトに「資料請求」を追加しただけでCV率が2倍に

CVポイントとして「無料トライアル」だけを設置しているケースが意外に多く存在します。こうしたビジネスでのCVポイントの階段設計は、「無料トライアル」→「商談」→「本導入」ではなく、「資料請求・お問い合わせ・導入相談」→「商談」→「無料トライアル」→「本導入」というより細かい階段設計が望ましい。

オウンドメディアのCVポイントを変えて、CV率が4倍に

例えば、ブログ記事の下部で「詳しくはお問い合わせください」「サービスに関する資料はこちら」などと誘導してしまっているケースが多く見受けられます。

この場合であれば、見込み客はお役立ち情報でオウンドメディアに誘引されてきたので「さらなるお役立ち情報をまとめた資料の請求」や「より詳しい説明を聞けるウェビナーへ参加」などを次のCVポイントとすれば、より不安感なく階段を登ってくれます。

オウンドメディアの記事下のCVポイントを「お問い合わせ」と「ホワイトペーパーダウンロード」の2パターンにわけてABテストしたところ、CV率は「ホワイトペーパーダウンロード」のほうが4倍も高いという結果が出ました。

CVポイントは多いほどよいわけではない

ただし、CVポイントはとにかく細かく設置すれば良い、というものではありません。自社がどのような顧客と取引したいか、顧客はどのようなコミュニケーションを望んでいるか、という結果のイメージから逆算して、マーケティング施策の階段を設計していくことが重要です。

新メニューや新商品開発にも使える階段設計の考え方

階段設計を見直して、休眠顧客が登りたくなる新しいステップ、つまりは新しいメニューや新サービスの開発をしたほうが、受注数を引き上げる効果が大きくなることがほとんどです。

売り方の階段設計に関して、BtoB商材でよく使われるパターンをご紹介しますで、ぜひ参考にしてください。

  1. 無料トライアル期間を設けるいきなり有料プランを販売するのではなく、まずはハードルの低い「無料」で自社サービスを使ってもらい、利用イメージを持ってもらうことで、本番導入へつなげていく手法です。
    例として、サイボウズ社が提供しているウェブベースの業務アプリ構築サービス「kintone」では30日間無料トライアルを提供しています。
  2. 初日から有料だが「14日間返金保証」などをオファーする購入ハードルを下げるために、満足できなかった場合の返金保証などを顧客にオファーするのも有効な手法です。ソフトウェアサービスの場合は、原価をほぼ無視できるため、返金保証をつければ、とりあえず初日から課金できます。
    例として、「RIZAP」は「30日間はいかなる理由でも、ご納得いただけないときは、コース代金を全額返金いたします」と謳っています。
  3. 一部機能・リソースを切り出し廉価版や新商品を販売する既存ソユ品のすべての機能を提供するのではなく、一部の機能のみを切り出した廉価版を設定して販売したり、既存リソースを活かして新商品を販売したりするパターンです。
    例として、本業のコンサルティングサービスを提供する中で核としたノウハウを部分的に切り出し、DVD教材として販売するなど。また、マーケティングツールである「HubSpot」が、月100,000円のプロフェッショナルプランのほかに、月6000円のスタータープランを提供している。
  4. 一部作業を代行する顧客側の人的リソースの不足が原因でサービス導入に踏み切れず、導入が先に延びたり、導入しても定着せず解約につながったりすることがあります。そうした失注を防ぐ方策を用意しておきます。
    例として、セールスフォース社の「Pardot」は、ツール導入・活用支援を外部パートナー企業に委託することで、顧客のリソース不足による失注を事前に防いでいます。
  5. 課金方法を変えるBtoBの商談では、金額がネックになる場合も多いものです。そこで、トータルの費用は変わらないものの、課金方法を変えることで、買ってもらいやすくする、という手法が存在します。
    例として、数百万円かかるウェブサイト制作を月5万円×5年分などに分割するリースが少し前に流行りました。また、株式会社クラス社の「CLAS」という家具のサブスクリプションサービスなどもあります。
    こうした手法を用いることで、見込み客がより登りやすい階段を用意してあげることが、受注数の引き上げにも有効となる。

認知獲得からサービス導入まで、どこにボトルネックがあるかを把握する

マーケターは、CPAやCV率の最適化などの「部分最適」にこだわらず、常に「全体最適」を行っていく必要があります。

顧客の視点に立って、自社の商品は購入しやすい状態になっているかをチェックするための思考ツールとしての「階段設計」の考え方をぜひ取り入れてください。

出典:
栗原 康太『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』すばる舎(2020)

 

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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