マーケティング

BtoBマーケティングの戦略と実践(2)〜BtoCとの違い〜

BtoCとは違ってBtoBでは有効なチャネルが少なく、郵送によるDMやFAXによるDM、展示会、業界紙への広告出稿などしかプロモーション手段がありませんでした。

しかし、この10年ほどでインターネットが生活の中にまで入り込んで普及したことで、ほぼすべてのビジネスパーソンがスマホを1人1台持ち、検索エンジンやSNSで情報を得ることが当たり前になりました。

加えて、コロナによりリモートでの働き方が進み、10年かかると言われたBtoBマーケティングが、今大きく変化しています。その変化に対応するBtoBマーケティングについて学ぶことができます。

この記事でわかること

  • BtoCマーケティングとの違い
  • マーケティング投資の前にLTVを強化する
  • 例外的にコストが劇的に下がるケース

BtoCマーケティングとの違いを把握しておく

一般的なBtoC(企業対消費者)のマーケティングとはどのような違いがあるのか下記のようにまとめています。

購買チャネル

BtoCマーケティングとBtoBマーケティングの一番の違いは、購買プロセスに営業が介在することです。そのため、BtoBマーケティングの戦略設計では、どう営業パーソンが商談しやすい状態で案件をパスするかを設計することがポイントとなります。

さらに、売上を構成する「商談数」「受注率」「商材単価」のうち、「受注率」は10〜30%に落ち着くことが多い。加えて「商材単価」も10倍、100倍に上がることが稀です。しかし、「商談数」だけはマーケターの努力で10倍、100倍に増やすことが可能です。

購買関与者の数

BtoBの場合は、原則として複数人、複数職種、複数役職の人たちが購買の意思決定に関与します。そのため、BtoBマーケティングでは顧客社内の確認・調整・稟議があることを前提にして、発信するメッセージやコンテンツ、全体のコミュニケーションシナリオを設計する必要があります。

購買目的

BtoBの場合、「売上や利益をあげる」「コストを下げる」など、業務上の課題解決を目的とした購買行動が主流です。そのため、ウェブサイトや営業資料、広告のクリエイティブ(制作物)で打ち出すメッセージやコンテンツは、企業の課題解決にいかに寄与するかを訴求することが重要です。

検討期間

BtoBの場合は、数ヶ月、もしくは数年単位の検討期間が必要になることが普通にあります。BtoBマーケティングの戦略設計では、こうした顧客側の検討期間の特徴を最初から考慮に入れておく必要があります。

情報の非対称性

購入企業側は事前の情報が少ない中で意思決定をする必要がある。そのためウェブコンテンツを大量に掲載し、検討・意思決定にあたっての顧客の不安を少しでも取り除くことができれば、顧客の意思決定におけるハードルを下げることができます。

顧客の数が少ない

「顧客数」や「製品販売数」がBtoC向けの商品と比べて極端に少ないことです。そもそも対象となる顧客数が少ないために、マス広告よりも業界紙での広告出稿が有効だったり、一度つくった顧客接点を維持・深堀りしていく重要性が高かったりします。

マーケティング投資の前にLTVを強化する

もともと強いビジネスであればあるほど、戦略立案の自由度が上がります。マーケターも、自分が担当するビジネスのユニットエコノミクスがプラスになっているか、マイナスになっているかを常に考える習慣を持つことが大切です。

LTVが高いとCACやCPAを無視できる

ユニットエコノミクスは、

LTV÷CAC

という計算式で表せます。

LTV(Life Time Value)は「顧客生涯価値」とも言われ、1顧客が生涯に生み出す利益の合計のことです。

CAC(Customer Acquisition Cost)は「顧客獲得コスト」のことで、新規顧客獲得にかかった営業・マーケティング費用の合計を、新規顧客獲得数で割ることで算出できます。

「LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得コスト)」が健全な数値であれば、収益性のあるビジネスとみなせます。たとえばSaaSビジネスであれば、「3」以上が目安になると言われています。

この式内のLTVが高ければ高いほど、もしくはLTVと現状のCACの差分が大きければ大きいほど、CACに費用をかけられます。

逆にLTVが低く、ユニットエコノミクスがカツカツの状態であれば、CACに大きな費用を透過することはできず、マーケティング戦略上、取れる選択肢の数は少なくなります。

LTVは構造に影響を受ける

企業が成功するためには、大きな顧客への到達コスト(CAC)を許容できる大企業や政府向けのサービスを提供するか、到達コストを劇的に抑えられるバイラルマーケティング(口コミを利用した低コストのマーケティング手法)を活用して、どの企業も使うインフラ的なサービス(メールなどのコミュニケーションツール、会計ソフトなど)を低い到達コストでマーケティングするか、でないと難しい。

BtoBのCACは一定以下には下がらない

BtoBの購買には以下のような特徴があり、想像以上に営業コストがかかります。

  • 衝動買いが少なく、購買までの検討期間が長い
  • 購買に複数人、複数職種、複数役職が関与するため、社内での調整や説明、稟議などのプロセスが必要
  • 商談から受注までの検討期間が長期にわたる
  • 最終的な販売チャネルは店舗やECサイトではなく、営業パーソン。訪問、提案、見積もり、契約などにおいて営業パーソンが介在する

ビジネスを成長させるためにチャネルを広げようとするなら、どうしても一定以上の広告宣伝費が必要になり、受注率は20〜30%程度に低下していきます。BtoBにおいて、CACは一定以下には下がらない、という事実に立脚してビジネス全体を設計していくことが重要なポイントとなります。

エンプラかインフラか

ビジネス上の「成功」のひとつの基準といえる上場を達成しているBtoB企業は、ことごとく以下に2パターンのいずれかにあてはまるサービスを提供しています。

  1. エンタープライズ企業(大手)向け

例:Sansan、キーエンス、NTTデータ、電通など

  1. インフラ系(単価は低いが、一度入ると継続期間が5年、10年と長くなる)

例:Slack、Chatwork、楽楽精算など

SMB(Small and Medium Business)、つまり中小企業向けに商品を開発した瞬間に、ビジネスのサイズが限定され、上場できる規模にはならない。マーケティングの巧拙以上に、誰を対象顧客にするか(エンタープライズ企業)、どんなサービスを提供するか(一度入ったら抜けにくいインフラ商材)で、ある程度勝負は決まってしまう。

例外的にコストが劇的に下がるケース

  • ネットワーク効果(例:Slack、ベルフェイスなど)

製品やサービスの利用者が増えるほど、その製品やサービスのインフラとしての価値が高まることを「ネットワーク効果」といいます。

  • 口コミ(例:識学、すごい会議など)

見込み客同士が積極的にコミュニケーションをとっている領域では、サービス提供側が何もしてないのに、口コミによって勝手に顧客獲得が進む場合があります。わかりやすい例が、経営者向けのサービスです。経営者は勉強会や会食、ゴルフなどを通じての横のつながりが強いためです。

  • 既存顧客にアップセル、クロスセルする(例:Pardot、モチベーションクラウドなど)

新規顧客の獲得コストは、既存顧客に売る場合のコストは5倍はかかると言われます。つまり、既存顧客への追加販売は、新顧客へ売る場合に比べてCACを5分の1に抑えられる、というのと同義です。

  • 強力なブランド(例:IBM、マイクロソフトなど)

ブランド自体が強力なパワーを持っている場合には、CACを低く抑えることができます。BtoB商材であれば、IBMやマイクロソフトなどが該当します。

  • 他社が提供できない製品・サービス(例:浜松ホトニクス)

世界でその会社しか提供できない技術を持っていれば、顧客はその会社に依頼するしかありませんから、CACは劇的に低減されます。

  • 第一想起され、指名検索される(例:Sansan、ラクスル、アスクルなど)

当該ジャンルにおける第一想起を取れれば、CACは大きく低減します。俗に言う「指名買い」です。

  • 強力な販売代理店の存在(例:光通信、大塚商会など)

商品を強力な販売力を持つ代理店に扱ってもらうことも、CACの低減に大きな効果を及ぼします。一方、販売代理店への依存が長く続くと、自社で顧客ニーズを細かく把握できなくなるデメリットもあります。

  • コンテンツマーケティング(例:インソース、WACULなど)

もし自社のビジネス領域に有望な検索クエリ(検索に使われるキーワード)があれば、コンテンツマーケティングは劇的にCPAやCACを下げてくれる取り組みのひとつです。

LTVを高める方法は3つにわけて考える

LTVは一般的に「平均購買単価×継続購買期間or平均購買頻度」で算出されます。そのため、これを伸ばすには平均購買単価を上げるか、継続購買期間を延ばすか、平均購買頻度を増やすかの3つの選択肢しか存在しません。

出典:
栗原 康太『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』すばる舎(2020)

 

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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