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DXにおける成功と失敗|DXがうまくいかない理由&ChatGPTのインパクト

DX(デジタルトランスフォーメーション)は現代のビジネスにおいて避けて通れないテーマとなっています。しかし、その実施に当たっては多くの企業が困難に直面しています。経営層のDXに対する理解不足、目的の不明確さ、人材不足など、DXの推進にはさまざまな障壁が存在しています。

今回は、これらの問題点とその背後にある要因について考えていきたいと思います。さらに、生成系AI「ChatGPT」が企業経営に与える影響と活用の方向性について検討します。生成AI技術が、顧客対応の効率化や新規事業の創出、意思決定の支援など、企業活動における創造性や革新性の向上にどのように貢献するのか、一緒に考えてみましょう。

DXの具体的な問題点とその解決策についての理解を深める機会となれば幸いです。


DXを成功させるポイント

DXを成功させるには、いくつかの重要な」要素があります。

経営層の理解

DXの成功において、経営層が積極的に関与することが不可欠です。単にIT部門に任せきりにするのではなく、経営層自身がDXやITシステムについての知識を深める必要があります。

単なる専門用語の理解を超え、ビジネス戦略にどのように組み込むかという視点が求められます。経営層がDXを理解し、主導することで、企業全体が一体となってDXを推進できるのです。

さらに、経営層が主導することで、社内の各部門が協力しやすくなり、DXの効果を最大限に引き出すことが可能になります。

明確な目的設定

DXを進める際には、その目的を明確にすることが重要です。目的が不明瞭だと、結果的には「何のためにやっているのか」が不明確になり、効果が出にくくなります。

例えば、業務効率化やコスト削減、新しい市場への参入など、具体的な目標を設定することで、DXの方向性が明確になります。

目的を明確にすることで、それに対する具体的なKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)も設定しやすくなり、結果を測定する基準ができます。

適切な戦略

目的が明確になったら、目的に沿った戦略と計画を練る必要があります。現状分析やリスク評価、具体的なアクションプランを検討します。

計画があることで、途中で迷うことなく、必要なリソースを確保しやすくなります。戦略と計画を練る際には、短期的な成果だけでなく中長期的なビジョンも考慮することが重要です。それにより、持続可能なDX推進が可能になります。

DXとデジタル化の違いは、DXが企業全体を変革しビジネスの新しい形を生み出すことを目指すのに対し、デジタル化は単に業務プロセスの効率化やコスト削減を目的としたITツールの導入にとどまる。

DXがうまくいかない主な理由とは

DXの推進は、多くの企業で取り組まれていますが、成功する企業とそうでない企業があります。成功しないよくある理由として、次の三つがあります

経営層のDXに対する理解が不足している

DXを推進する上で、経営層の理解が不足していると、その取り組みは中途半端に終わってしまいます。経営層がDXやITシステムについて十分な理解を持っていない場合、単に流行りの技術を導入するだけで、その後の運用や効果測定がおろそかになる可能性が高いです。このような状況は、企業全体のDX推進において大きな障害となります。

DXの目的が明確でない

DXの目的が明確でないと、その取り組みは方向性を失います。業務効率化やコスト削減など、具体的な目的が設定されていない場合、導入したITシステムが本来の目的から逸脱してしまうことがあります。目的が不明確な状態でのDX推進は、リソースの無駄遣いを招く可能性が高いです。

必要なITスキルを持つ人材が不足している

DXを成功させるためには、ITスキルを持つ人材が不可欠です。しかし、多くの企業ではこのような人材が不足しており、そのためにDXが停滞してしまうケースが少なくありません。特に、専門的な知識が必要な場合、人材不足は企業のDX推進を大きく妨げます。

DXは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織文化を変革すること

ChatGPTがもたらす経営へのインパクト

生成系AI「ChatGPT」は、企業経営に多角的な影響を与えます。顧客対応から新規事業の創出、意思決定まで、活用範囲は広いです。


顧客対応の効率化

ChatGPTは、よくある質問(FAQ)に対する回答の生成を補助することができます。これを専門のFAQ管理システムと組み合わせることで、基本的な問い合わせに対しては自動化された対応が可能となります。その結果、人間のオペレーターはより複雑な問題に集中でき、全体として顧客対応の品質と効率が向上します。

新規事業の創出

ChatGPTを活用るすことで、顧客とその課題のペアをランダムにかつ大量に組み合わせて、新しいサービスや商品のアイデアを生成することができます。このようなアプローチにより、従来考えられなかったような新規事業のアイデアが生まれる可能性があります。

知識の蓄積と共有

ChatGPTは、企業内での知識蓄積とその共有を効率よく行います。AIが過去のプロジェクトや業績データを分析し、それを社内で瞬時に共有することができます。これにより、新しいプロジェクトやタスクに取り組む際のリサーチ時間が大幅に削減されます。

意思決定の支援

ChatGPTは、意思決定のプロセスにおいても有効です。AIが膨大なデータから関連性の高い情報を抽出し、それを基に複数の選択肢を提示します。この情報に基づき、企業はリスクを最小限に抑えつつ、効果的な意思決定が可能となります。

イノベーションの促進

ChatGPTは、企業内での新しいアイデアの発生を促します。例えば、過去の成功事例や失敗事例を分析し、その結果を基に新しいアプローチや戦略の提案が可能です。これにより、社員が自ら考え、新しい方法を試す機会が増えると、企業全体がより革新的な方向へと進むことができるでしょう。

生成系AIの活用は初期段階。信憑性とセキュリティが課題だが、今後は技術の進化に合わせ、ビジネスでの多様な応用と拡大に期待される。

DXに必要な人材の育成

DXに適したスキルセット、人材育成の戦略、そして外部からの人材確保は、企業が注意深く考慮すべきポイントです。

DXに求められる多様なスキルセット

一般に、プログラミング能力が最初に思い浮かべられるかもしれませんが、それだけでは不十分です。データ分析能力は、ビッグデータを活用してビジネスの方向性を見極める際に不可欠です。

プロジェクトマネジメントスキルは、多くの部署やプロジェクトが関連するDXを効率よく推進するために必要です。さらに、柔軟な思考力も重要です。これは、新しいテクノロジーや方法論に対応できる能力を意味します。

人材育成の戦略

人材育成においては、継続的な教育プログラムが重要になります。社内セミナーや外部の専門家による講演、オンライン学習など、さまざまな教育手段を活用してスキルを高める必要があります。

また、知識を共有する仕組みを整えることが大切です。オンライン上での情報共有や月例のミーティング、さらには専門家によるメンタリングなどがあるでしょう。

外部からの人材確保

外部からの人材確保は、特に高度な専門スキルが必要な場合に重要です。AIやデータサイエンスなどの専門スキルを持つ人材は、しばしば外部から採用されます。しかし、その際には企業文化とのマッチングも考慮する必要があります。企業文化に適応できない人材が入社すると、そのスキルが十分に活かされない可能性があります。したがって、採用の際には、専門スキルだけでなく、企業文化に合った人材を選ぶことが重要です。

AIを活用したイノベーションのためには、まずプロセスイノベーションから着手し、AIの理解を踏まえてプロダクトイノベーションに進む。

DX推進の壁を乗り越えるために

DXの推進は、多くの企業にとっては避けられない課題ですが、実感されている通り簡単なことではありません。

内部の抵抗を乗り越える

内部の抵抗は、DX推進においてよく見られる障壁の一つです。特に、既存の業務フローに変更を加える場合、スタッフからの反発が起きやすいです。このような状況を解消するためには、変更の必要性とそのメリットを明確に伝えることが重要です。

具体的には、オールハンズミーティングや社内セミナーを開催して、変更の背景や目的、そしてその後に期待される効果について説明すると良いでしょう。

リソースの確保

DX推進には、物的、財政的なリソースが必要です。特に、ハードウェアやソフトウェアの導入、そしてそれに伴う予算確保は多くの企業で問題となっています。

リソースが不足している場合、リースやクラウドサービスを活用することも一つの方法です。また、特定のプロジェクトに予算を割り当てるなどの対策が考えられます。

持続可能なDX推進のための方策

DXは一過性のプロジェクトではなく、持続的な取り組みが求められます。そのため、短期的な成功を追求するのではなく、長期的なビジョンを持つことが重要です。

例えば、中長期計画にDXの戦略を組み込み、各部門と連携してDXの目的とKPIを明確にし、それを企業全体のビジョンや戦略に反映させます。そして、定期的な進捗チェックとその結果に基づいた戦略の見直しを行うことが、持続可能なDX推進には不可欠です。

まとめ

DXは現代ビジネスの不可欠な要素であり、その成功と失敗は企業の未来に大きな影響を与えます。DXの成功には経営層の積極的な関与、明確な目的設定、そして適切な戦略と計画が必要です。

一方で、経営層の理解不足、目的の不明確さ、人材不足などが主な失敗の要因となり得ます。生成系AI「ChatGPT」のような先進技術は、顧客対応から新規事業創出、意思決定まで多角的に企業経営に貢献可能です。

持続可能なDX推進のためには、内部の抵抗を乗り越え必要なリソースを確保したうえで、長期的なビジョンを持つことが重要となります。問題点と解決策の理解を深め、DXに取り組んでください。

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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