ChatGPTでネーミングを進めるなら、作業を5つに分けてください。名前の要件を文章にする、候補を数十個出す、商標として登録できない型を落とす、先行商標とドメインを確かめる、1つに決める。この順です。
ChatGPTが本当に強いのは2番目だけで、ほかの4つは人の作業です。
書いているのは芝先恵介(株式会社01START代表)です。生成AIの研修と導入支援を仕事にしていて、自社の商標も自分で出しました。
そのまま貼って使えるプロンプトは、3つ目の見出しにまとめました。中身は「目的・役割・成果物・参照・要件・形式・精査」で、私が使っている8Sプロンプトモデルの型です。候補の落とし方と確認手順は、特許庁とJPRSの公開情報にあたって書いています。以下、外部の制度や料金についての記述は、いずれも2026年8月に確認したものです。
ChatGPTでネーミングを進める5つの工程
ネーミングは、候補を出す作業ではなく候補を捨てる作業です。だから工程を分けます。
| 工程 | やること | 誰がやるか |
|---|---|---|
| 1. 要件 | 名前に持たせる意味と、使う場所を文章にする | 人 |
| 2. 候補 | 30個を一気に出す | ChatGPT |
| 3. 選別 | 商標として登録できない型を落とす | 人 |
| 4. 確認 | 先行商標とドメインの空きを見る | 人 |
| 5. 決定 | 残ったものから1つ選ぶ | 人 |
いちばん時間を取られたのは2番目ではなく、5番目の後に来る出願の手続きでした。自社の商標を出したときの実際の日数は、最後の章に書いています。
ChatGPTを使う利点は、一度に多くの案が並ぶことです。10個をひねり出して迷うより、30個を並べて見比べたほうが、良し悪しの基準がはっきりしやすくなります。専門家に依頼する前の叩き台を自社だけで作れるのも小さくありません。
一方で、2番目だけを回しても名前は決まりません。要件があいまいなまま候補を出すと、それらしい語が並ぶだけで選べなくなります。研修で受講者の画面を見ていると、手が止まるのはたいてい3番目です。どれも悪くないが決め手がない、という状態になります。
この記事の分量の大半を3番目と4番目に割いているのは、そのためです。事業の骨子そのものがまだ固まっていないなら、名前より先にそちらです。1枚にまとめる方法はChatGPTを活用したリーンキャンバスの作り方にまとめてあります。そもそも何を売るかから考えている段階なら、ChatGPTを活用した新たな事業の生み出し方が前工程にあたります。
この記事が扱う範囲
ここで扱うのはサービス名・商品名・ブランド名です。社名(商号)は前提が変わります。会社の名前には会社法や商業登記の決まりが別にかかるため、同じ手順では進められません。社名を決める段階なら、法務局または司法書士に確認してください。屋号や店名も、看板や許認可の名義との関係を個別に見る必要があります。

ネーミングの要件を3つ決める
プロンプトを書く前に、次の3つを自分の言葉で決めます。ここが空白だと、ChatGPTがその空白を勝手に埋めます。
誰に何を売るか
1文で書きます。「アニメの舞台になった場所を地図で探せる、国内旅行者向けのアプリ」くらいの粒度で十分です。業種名だけ(「旅行サービス」)では足りません。
利用者像がぼやけているなら、先に固めたほうが早くなります。手順はChatGPTを活用したペルソナの作り方に書きました。
表記と読み
カタカナか、英字か、和語か。何文字くらいか。ここを決めずに出させると表記がばらけて、比較ができません。
あわせて、電話で口頭で伝わるかも条件に入れてください。実際に困るのは、聞き返される名前です。受付で名乗る場面や電話口で、毎回スペルを説明することになります。
使う場所と、そこにある制約
ロゴ、アプリのアイコン、URL、請求書、看板。使う場所を書き出すと、字数の上限が自然に決まります。
見落としやすいのがドメインです。会社の `co.jp` は1組織につき1つしか登録できないため、すでに持っているなら新サービス用にもう1つ取ることはできません。新サービスのURLは `example.jp` のような汎用JPドメイン名か、`.com` などの別の種類になります。候補を出す前に確定する制約なので、先に決めておきます。ドメインの種類と確認方法は、後の「ドメインの空きを見る」で詳しく書きます。

ChatGPTでネーミングするプロンプト3種
3つのプロンプトを順に使います。1で広く出し、2で発想を変えて出し直し、3で並べ替えます。〈 〉の中を自社の情報に置き換えてください。プロンプト2と3は、1と同じ会話の続きで打つ前提です。
組み立ては、私が普段使っている8Sプロンプトモデルの形にしてあります。目的・役割・成果物・要件・参照・形式・精査・手順の8つを見出しにして書く型です(詳しくは8Sプロンプトモデルにまとめました)。頭から文章で書くより、埋めもれに気づきやすくなります。
OpenAIの公式ガイドも同じ方向のことを勧めています。同ガイドが挙げているのは次の3点です。
- どう答えてほしいかの規則をモデルに示す
- 想定される入力と、望ましい出力の例を渡す
- 答えを作るために必要な追加情報を渡す
(OpenAI「Prompt engineering」)。8Sでいえば、規則は要件、例と追加情報は参照にあたります。
プロンプト1:候補を広く出す
# 目的
新しいサービスの名前の候補を出す。
# 役割
あなたは日本語のネーミングを担当するコピーライターです。
# 成果物
サービス名の候補を30個。
# 参照
- サービス内容:〈1文。例:アニメの舞台になった場所を地図で探せる旅行アプリ〉
- 想定利用者:〈例:20〜30代の国内旅行者〉
- 名前に持たせたい意味:〈例:気軽さと、目的地がすぐ見つかる感じ〉
- 使う場所:ロゴ、アプリのアイコン、電話で口頭で伝える場面
# 要件
- カタカナ4〜6文字を15個、英字表記を15個
- 一般名詞をそのまま使った名前は出さない
- 地名と、品質をそのまま言い表す語(高級、安心など)は使わない
- 文やキャッチフレーズにしない。単体の名前として成立する語にする
# 形式
次の3列の表だけを出力する。表の外に説明を書かない。
| 候補 | 読み | 名前の由来(15字以内) |
# 精査
出力する前に、要件に反する候補が混ざっていないかを自分で確認し、あれば差し替える。8つのうち「手順」は入れていません。段階に分けて考えさせたい複雑な作業のときに足す要素で、候補出しには要らないためです。
参考までに、この記事の初版(2023年8月)に載せた、GPT-4から実際に返ってきた出力を挙げます。上のプロンプト1とは条件が違い、当時は表記や字数を指定していません。指定しないと、こういう粒度で返ってきます。
| 候補 | 読み | 名前の由来 |
|---|---|---|
| アニ旅 | あにたび | アニメと旅行を組み合わせた覚えやすい名前 |
| マンガマップ | まんがまっぷ | 漫画のスポットを地図上で見つけるイメージ |
| キャラ探 | きゃらさが | キャラクターのいる場所を探す楽しさを表現 |
| コミックルート | こみっくるーと | 漫画のスポットを巡るルートを提案するイメージ |
| アニメトリップ | あにめとりっぷ | アニメの世界を旅するトリップを提供 |
これはChatGPTが出した候補をそのまま載せたもので、実在するサービス名と重なっている可能性があります。そのまま使えるという意味ではありません。
表記も字数も揃っていないので、このままでは比べられません。プロンプト1で「カタカナ4〜6文字」「英字表記」と数まで切っているのは、比較できる形に揃えるためです。「一般名詞をそのまま使わない」「地名を使わない」の2行も飾りではありません。理由は「商標登録できないネーミングの型」で説明します。
プロンプト2:発想の作り方を変えて出し直す
1回目の出力は、似た発想の候補が固まることがあります。作り方そのものを指定して、もう一度出させます。
# 目的
同じ前提のまま、発想の作り方を変えて候補を出し直す。
# 成果物
サービス名の候補を20個。役割と参照は先ほどのまま。
# 要件
次の4つの作り方を5個ずつ使う。
1. 2つの言葉をつなげる(例:アニメ+旅)
2. 動詞から作る(利用者がその場でする動作を名前にする)
3. 音を短く切る(3音か4音で言い切る)
4. 和語で作る(外来語を使わない)
# 形式
次の4列の表だけを出力する。
| 候補 | 読み | 作り方 | 名前の由来(15字以内) |作り方を列に書かせると、後から「この方向は全部いらない」とまとめて捨てられます。1個ずつ判断するより手が早く動きますし、判断の理由も残ります。
プロンプト3:出た候補を自分で並べ替えさせる
最後に、候補を並べ替えさせます。ChatGPTに決めさせるのが目的ではありません。人が見る順番を作らせます。
# 目的
出そろった候補を、人が見る順番に並べ替える。
# 成果物
候補の採点と、合計点の高い順の並び。
# 参照
〈1回目と2回目の候補を貼る〉
# 要件
次の4観点で各5点。
- 覚えやすさ:一度聞いて書き取れるか
- 独自性:同じ業界に似た名前がすでにありそうか
- 意味の一致:サービス内容が想像できるか
- 言いやすさ:電話で伝えて聞き返されないか
点数の理由は観点ごとに10字以内。どれか1つを推薦せず、順位だけ出す。
# 形式
次の表だけを出力する。
| 候補 | 覚えやすさ | 独自性 | 意味の一致 | 言いやすさ | 合計 | 理由 |「独自性」の点数は参考程度に見てください。検索させたとしても、商標が似ているかどうか(類否)の判断は、その商標をどの商品・サービスに使うかや取引の実情まで踏まえた法律の判断です。特許庁はその判断の考え方を商標審査基準として公開しています。ChatGPTが付ける点数はその判断ではないので、ここは後の工程で人が確かめます。「どれか1つを推薦しない」と書いているのも同じ理由です。
同じ前提を毎回貼るのが面倒なら、あらかじめ設定に入れておく手もあります。方法はChatGPTのカスタムインストラクションの使い方にまとめました。
出力が崩れたときの打ち返し方
そのまま使うと、次のようなことが起きます。指示を足して出し直すと直ります。
| 起きること | 打ち返す指示 |
|---|---|
| 語尾が似た候補ばかり並ぶ | 「末尾3文字が重複する候補は除いて出し直してください」 |
| 30個と言ったのに20個で止まる | 「あと10個。すでに出した候補と重複しないこと」 |
| 英字案の読みが日本語として成立しない | 「日本語話者が初見でそう読める綴りに限ってください」 |
| 説明文が長く、表が読めない | 「表だけを出力し、表の外に文章を書かないでください」 |
| 有名サービスに似た名前が混ざる | 「既存の有名サービスと同じ音・同じ綴りの候補は外してください」 |
最後の1行は入れておいてください。語感の良い候補は、どこかで聞いた名前に似ていることがあります。

ChatGPTに任せられること、任せられないこと
名前の候補出しは任せられます。商標が使えるかどうかの判断は任せられません。この線がどこから来ているかを書いておきます。
私は生成AIの研修を担当しています。その研修の質疑応答で、知らない分野についてAIに聞くと、それらしい答えは返るがどこまで信じてよいのか、と質問を受けたことがあります。結局自分で裏を取るなら、自分で調べたほうが早いのではないか、とも言われました。
そのときの答えは今も変えていません。良し悪しを自分で判断できない領域の答えを、AIの出力だけで確定させないほうがいい、というものです。知らない領域には具体的な指示が出せないので、曖昧な答えしか返ってきません。加えて、返ってきたものが間違っていても気づけません。下調べに使うのは構いませんが、そこで打ち止めにすると危ない、という意味です。
つまり任せられる範囲は、自分が良し悪しを判断できる範囲までしか広がりません。名前の候補は見れば良し悪しが分かります。商標の類似は、見ても分かりません。ここから先が人の作業になるのは、この線引きによります。
この線引きはネーミングに限りません。営業や販売の工程でどこまでを生成AIに寄せるかも同じ考え方で決めています。工程ごとの切り分けはTHE MODELとChatGPTを活用したマーケティング施策に書きました。

商標登録できないネーミングの型
候補が並んだら、次は落とす作業です。ここで効くのが、特許庁が公開している「出願しても登録にならない商標」の類型です。
特許庁は、登録を受けられない商標として次の3つを挙げています(特許庁「出願しても登録にならない商標」。以下、この章の引用はすべて同ページからです)。
- 自己と他人の商品・役務(サービスのこと)とを区別することができないもの
- 公共の機関の標章(マークそのもの)と紛らわしい等、公益性に反するもの
- 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの
1つ目は、名前そのものの作りの問題です。その名前が、自社の商品を他社と見分ける目印になっていないと判断される型で、ChatGPTの出力にはこれが混ざります。特許庁が挙げている例とあわせて並べます。
| 落とす型 | 特許庁が挙げている例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 標語(キャッチフレーズ)になっている | 標語、現元号 | 商標法3条1項6号 |
| ありふれた氏や名称だけでできている | 山田、スズキ、WATANABE、田中屋、佐藤商店 | 同3条1項4号 |
| 極めて簡単でありふれた形になっている | 仮名1字、数字、○△□、ローマ字1〜2字 | 同3条1項5号 |
| 産地や品質をそのまま言っているだけ | 菓子に「東京」、シャツに「特別仕立」、飲食物の提供に「東京銀座」、医業に「外科」 | 同3条1項3号 |
| その商品・サービスの一般的な名前をそのまま使っている | アルミニウムに「アルミ」 | 同3条1項1号 |
| 同業者の間で普通に使われるようになった語を使っている | 清酒に「正宗」 | 同3条1項2号 |
| 中身と違うことを言っている | ビールに「○○ウイスキー」、菓子に「パンダアーモンドチョコ」 | 同4条1項16号 |
「菓子に東京」のような書き方は、その商標をどの商品・サービスに使うか(指定商品・指定役務)とセットで判断される、という意味です。同じ「東京」でも、何に使うかで結論が変わります。
ChatGPTの出力に混ざりやすい2つ
1つは 標語 です。名前を出させると、「旅する、を、もっと自由に」のような、文としては良くできた案が返ってきます。プロンプト1に「文やキャッチフレーズにしない」と書いたのは、これを止めるためです。
地名や「安心」「高級」も入れたくなりますが、これも外します。産地や品質をそのまま言う型にあたるからです。プロンプト1で地名と品質語を禁じたのは、この2つを先回りして減らすためです。
創業者の名字を使いたい場合も注意が要ります。特許庁は、ありふれた氏に「株式会社」「商店」などを結合したものも、ありふれた名称に含まれると明記しています。
ただし、特許庁のページが登録できないとしているのは、いずれも「〜のみからなる商標」という書き方です。つまり、こうした語だけでできている場合の話です。図案化したり別の語と組み合わせたりすれば判断が変わることもありますし、長く使って知られた結果として登録されている例もあります(次の節)。
長く使った実績で登録する道
産地・品質の型、ありふれた氏の型、極めて簡単な形の型にあたる商標でも、登録を受けられる道があります。長く使った結果、その名前を見れば「あの会社のものだ」と分かる状態になっていれば、登録が認められる場合があります(商標法3条2項。特許庁の説明では「使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」)。
ただし特許庁は、そのために実際に使用した商標や商品・役務、使用した期間、地域、生産量、広告回数などを証明する証拠書類の提出が必要だとしています。育てた事実を書類で示せて初めて登録できる、という話です。立ち上げたばかりのサービスがこの道を当てにするのは現実的ではありません。
なお、中身と違うことを言っている型(ビールに「○○ウイスキー」)については、出願書類に書いた商品名を後から書き直すこと(補正)で解消する場合があります。特許庁は、指定商品を「菓子」から「アーモンド入りチョコレート」に補正すればこの理由は解消する、と書いています。名前を捨てる前に、出願する商品の書き方を見直す余地があります。
落としたあとの並べ替え
型で落とすと、候補はかなり減ります。ここでプロンプト3に戻り、残った候補を4つの観点(覚えやすさ・独自性・意味の一致・言いやすさ)で並べ替えてください。
上位5個くらいを次の確認工程に送ります。全部を調べると時間がかかりすぎますし、順位を付けておくと、確認で落ちたときに次の候補へすぐ移れます。

商標とドメインを確認して、出願まで進める
残った候補が実際に使えるかを確かめます。見るのは、登録を取れるかと、使うこと自体が他人の権利にぶつからないかの2点です。
後者は、登録を取らずに使い始める場合にも関係します。商標登録していなくても、その業界で名前が広く知られている会社があれば、似た名前は使えないことがあります。
広く知られた(周知の)表示と同一・類似のものを使って他人の商品や営業と混同を生じさせる行為(1号)と、著名な表示と同一・類似のものを自分の表示として使う行為(2号)が、不正競争として定められているからです(不正競争防止法2条1項1号・2号)。
候補が残ったら、J-PlatPatだけでなく検索エンジンとSNSでも同じ名前・似た名前を当たってください。
先行商標をJ-PlatPatで見る
他人の登録商標と紛らわしい商標は、登録を受けられません。先に登録されているものがないかは、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で無料で検索できます。経済産業省(特許庁)が所管する独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営しているデータベースです。
検索するときは、表記を変えた形(カタカナ・英字・ひらがな)と、読みが同じ別表記も試してください。ここで0件でも「空いている」という意味にはなりません。
特許庁が挙げている条件は「同一」ではなく「紛らわしいもの」で、類似かどうかの判断には専門知識が要ります。J-PlatPatで見るのは、明らかに当たっている候補を早めに外すためです。
本気で通すつもりの名前が残ったら、弁理士に相談してください。当社は商標の専門家ではないので、この線は引いておきます。自分で出願するか依頼するかは、複数の分野にまたがるか、似た名前が多そうか、特許庁からの指摘に自分で対応できるかで決めるとよいと思います。
かかる費用を先に知っておく
先に用語を1つ。区分とは商品やサービスの分野の区切りで、自社の名前をどの分野で使うかを出願時に指定します。使う分野の数だけ料金が増えます。
特許庁の産業財産権関係料金一覧(2026年8月確認)によれば、金額は次のとおりです(特許庁「産業財産権関係料金一覧」)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 商標登録出願 | 3,400円+(区分数×8,600円) |
| 商標登録料 | 区分数×32,900円 |
| 分納する場合(前期・後期の各支払分) | 区分数×17,200円 |
| 更新登録申請 | 区分数×43,600円 |
1区分で出願するだけなら、3,400円に8,600円を足して12,000円です。登録まで進めば、さらに32,900円かかります。「念のため多めに」と区分を広げると、出願料の8,600円と登録料の32,900円がその数だけ増えるので、金額が跳ねます。
逆に絞りすぎると、実際にサービスを展開する範囲を押さえきれません。金額と、いま本当に使う範囲の両方から決めてください。料金は改定されることがあるので、実際に出す前にリンク先で最新の金額を確認してください。
実例を1つ。当社が「AI駆動新規事業」を登録したときは4区分でした。登録料は分納(前期5年分)にしたので、登録証に記載された納付額は68,800円です。上の表の「区分数×17,200円」を4倍した金額と一致します。区分が増えるとどう効くかは、この掛け算のとおりです。
これは特許庁に納める料金だけの話で、弁理士に依頼する場合の費用は別です。それでも桁を知っていると、社内の話の進め方が変わります。名前を1つに絞ってから調べるより、候補が5個ある段階で見ておくほうが安全です。
自社が何区分になるかを調べる
金額が区分の数で決まる以上、自社がいくつになるかを先に見ておきます。どの商品・サービスがどの区分に入るかは、特許庁の類似商品・役務審査基準にまとまっています。出願日によって適用される版が違うので、ページの一番上にある最新版を見てください。
やることは2つです。売っているものを書き出す。その一つひとつが基準のどの区分に載っているかを引く。事業の内容によっては、同じ会社でも複数の区分にまたがります。
なお、この基準は早期審査の対象3にも関係します。ここに載っている表記どおりに指定商品・役務を書くことが条件になるためです(後述)。
ドメインの空きを見る
商標と並行してドメインも確認します。JPRSによれば、`example.jp` のような汎用JPドメイン名は日本に住所があれば個人でも組織でも登録でき、登録できる数に制限はありません。一方 `example.co.jp` のような属性型は、「一つの組織が登録できるドメイン名は一つだけ」と定められています(JPRS「JPドメイン名の種類」)。別法人であれば、その法人で1つ取得できます。
JPドメイン名の登録状況は、JPRS WHOIS で検索できます。検索タイプに「ドメイン名情報」を選び、候補のドメイン名を入れて調べます。同サイトは、WHOISへのデータの反映は最長で1日かかる場合があると案内しているので、取得直後のものは出てこないことがあります。
`.com` など他の種類は、それぞれのレジストラの検索窓で確認します。候補5個を縦に、`.jp` と `.com` を横に並べた表を1枚作って、まとめて確かめるのが早いです。
見るのは空いているかどうかだけではありません。読み違えられないか、口頭で伝わるか、他社のURLと1文字違いになっていないか。名前とドメインは同じ表で並べて見比べてください。
決まった名前が検索結果でどう見えるかまで整えるなら、メタディスクリプションの書き方も合わせて読んでみてください。
すでに使っている名前を早く登録したいときの早期審査
特許庁には、通常より早く審査してもらう早期審査という制度があります。特許庁に納める申出の手数料はかかりません(代理人やサービスに依頼する場合の手数料は別です。特許庁「商標早期審査・早期審理の概要」、2026年8月確認)。
基本的な条件は、出願する商標をすでに使っているか、使用の準備を相当程度進めていることです。これから作る名前をいきなり早く登録してもらう制度ではありません。そのうえで、次の3つのどれかに当てはまる必要があります。
| 対象 | 条件 |
|---|---|
| 対象1 | 指定商品・役務の一部にすでに使っていて、かつ権利化に緊急性がある |
| 対象2 | すでに使っている(使用の準備を進めている)商品・役務のみを指定している |
| 対象3 | 指定商品・役務の一部にすでに使っていて、かつ「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務のみを指定している |
対象1の「緊急性を要する」として、特許庁は次の5つを挙げています。
- 第三者が出願商標を無断で使っている
- 第三者から警告を受けている
- 他人に使用許諾を求められている、または許諾している
- 日本以外にも出願中である
- この出願をマドプロ(国際商標登録)出願の基礎にする予定がある
対象3を狙うなら、指定する商品・役務の名前を「類似商品・役務審査基準」等の表記と1字も違えずに書きます。特許庁は「漢字や句読点等の誤記に十分注意してください」と明記しています。
手続きは「早期審査に関する事情説明書」の提出です。書類1枚を出せば済むわけではなく、その商標を実際に使っていることを示す説明が要ります(特許庁は書類の作り方の手引きも公開しています)。出願日以降いつでも提出できますが、特許庁は出願と同時か、その直後の速やかな提出を勧めています。提出が大幅に遅れると、審査の着手も通常の出願より遅れることがあるためです。
ただし次の出願は対象外です。
- 国際商標登録出願(マドプロ)
- 動き商標・音商標などの新しいタイプの商標と、立体商標の一部
- コンセント制度の適用を主張する出願
新しいタイプの商標や立体商標は、どこまでが対象外かの線引きが細かく決まっています。当てはまりそうなら、上記の特許庁のページで直接確認してください。
ここに書いたのは特許庁が公開している制度の要点です。自社の出願がどの対象に当てはまるか、緊急性をどう説明するかは個別の判断になるので、実際に申し出る前に弁理士に相談してください。当社が受けているのは生成AIの研修と導入支援で、商標の相談ではありません。
早期審査を使ったときの実際の期間
特許庁は「早期審査の申出をした場合、申出から最初の審査結果の通知までは平均2か月程度」と案内しています。ここが読み違えやすいところで、これは登録までの期間ではありません。
私は当社の「AI駆動新規事業」(商標登録第6978645号)を、早期審査で出願して登録しました。出願はオンラインの商標登録サービス(Toreru)を使っています。同社から依頼や対価を受けてこの記事を書いたものではありません。
登録証に載っている日付はこうです。出願が2025年6月16日、登録が2025年10月20日。出願から登録まで約4か月でした。
その4か月の中身が問題です。早期審査として認められるまでにおよそ1か月。そこから審査結果が来るまでにおよそ2か月。ただし、その審査結果は登録ではなく特許庁からの指摘でした。依頼した弁理士が応答し、さらに1か月ほどで登録に至っています。
念のため書いておくと、指摘が来ること自体は、どの事務所やサービスを使っても起こりうる通常の過程です。利用したサービスの良し悪しの話ではありません。それに、応答すれば必ず登録されるわけでもありません。内容によっては拒絶査定になり、不服審判に進めばさらに時間がかかります。私の場合は運が良かったほうです。
数字の当てはめ方だけ注意してください。特許庁の「平均2か月」で来るのは最初の審査結果までです。そこで一度返ってくると、応答と再審査のぶんが後ろに積まれます。指摘が来なければもっと短く終わりますし、内容によってはこれより長くなります。
1件の実例なので、そのまま自社に当てはめないでください。発表やロゴ・パッケージ・サイトの制作時期を決めるときは、自社の出願について代理人に見通しを聞くのが確実です。少なくとも「早期審査だから数週間で終わる」という前提では組まないことです。
名前を決める作業と、その名前を権利として押さえる手続きは別物です。前者が終わった時点で気を抜くと、後者で戻ります。

まとめ:ChatGPTのネーミングは5工程で決める
上から順に埋めれば終わります。
| 工程 | 手を動かすこと | できたか |
|---|---|---|
| 1. 要件 | 誰に何を売るか/表記と読み/使う場所を書く | □ |
| 2. 候補 | プロンプト1と2で30〜50個出す | □ |
| 3. 選別 | 標語・ありふれた氏・極端に短い語・産地や品質・業界の言い方・中身と違う語を落とす | □ |
| 4. 確認 | J-PlatPat/検索とSNS/JPRS WHOIS/費用の桁 | □ |
| 5. 決定 | プロンプト3の順位で上から見て1つ選ぶ | □ |
※ 3の「落とす」には例外があります。産地や品質・ありふれた氏・極端に短い語は長く使った実績で登録が認められる場合があり、中身と違う語は出願する商品の書き方で解消することがあります(本文参照)。
ChatGPTが引き受けてくれるのは2番目です。1番目と3番目以降を人がやるからこそ、2番目の出力が使えるものになります。要件を書かずに「良いサービス名を10個考えて」と打つと、どれも悪くない10個が返ってきて、そこから先に進めません。
なお本記事は制度の一般的な紹介です。個別の商標について登録できるか、他人の権利にぶつからないかを判断するものではありません。判断が要る段階になったら弁理士にご相談ください。当社が受けているのは生成AIの研修と導入支援で、商標の相談ではありません。
同じ切り分けは営業の場面でもできます。商談でChatGPTをどこまで使うかは、チャレンジャーセールスモデルとChatGPTの活用方法にまとめました。
どの業務なら自社で良し悪しを判断できて、どこは人が持つべきか。当社の研修と導入支援は、まずこの線を社内で引けるようにするところから始めます。自社の業務でどこから手をつけるかを整理したい方は、資料請求からご連絡ください。
