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【プロンプト配布】リーンキャンバスの作り方|ChatGPTを活用した新規事業戦略

新規事業を成功させるためには、効率的な戦略が必要です。特に中小企業のなど、リソースが限られる中での戦略立案は難しい課題です。そこで注目されるのが、リーンキャンバスというフレームワーク。一枚の紙にビジネスモデルをまとめ、仮説を立てて検証することができます。

さらに、このリーンキャンバスをChatGPTで効率的に作成することもできるようになりました。この記事では、リーンキャンバスの基本からChatGPTの活用法を解説します。


 

リーンキャンバスとは

多くの場合、新規事業やプロジェクトを立ち上げる時にはビジネスプランを作成します。しかし、ビジネスプランは検討すべき項目も多岐に渡り、見直しや変更が難しいものとなりがちです。そこで登場するのが「リーンキャンバス」です。このフレームワークを使えば、ビジネスアイデアを短時間で可視化し、チーム全体で共有することができます。まずはリーンキャンバスの基本的な概念と活用方法を解説します。

フレームワークの説明

リーンキャンバスは1枚の紙に9つの基本要素を記入して、ビジネスモデルを簡潔に表現することができるフレームワークです。これにより、アイデアの優れた点や課題点が一目でわかります。具体的には、①顧客セグメント②顧客の課題③価値提案④ソリューション⑤チャネル⑥収益の流れ⑦コスト構造⑧主要指標⑨圧倒的な優位性、といった要素が含まれます。

利用目的と方法

リーンキャンバスの主な目的は、ビジネスアイデアを迅速に評価し、リスクを最小限に抑えつつ効果的な戦略を立てることです。具体的な方法としては、まず9つの要素について仮説を立て、それを実際の市場で検証します。このプロセスを繰り返すことで、ビジネスモデルを洗練していきます。

ビジネスモデルキャンバスとの違い

ビジネスモデルキャンバスもまた、ビジネスモデルを可視化するフレームワークですが、リーンキャンバスとはいくつかの点で異なります。ビジネスモデルキャンバスは大企業向けに設計されており、より詳細な情報を必要とします。一方で、リーンキャンバスはスタートアップや新規事業に特化しており、シンプルで柔軟な構造が特徴です。

リーンキャンバスの9つの要素を解剖

リーンキャンバスを効果的に活用するためには、以下の9つの要素を順番に埋めていくことが推奨されています。

No項目説明
1顧客セグメントターゲットとする顧客層を特定します。
2顧客の課題ビジネスが解決すべき顧客の具体的な課題を明確にします。
3価値提案顧客にどのような価値を提供するのかを考えます。
4ソリューション顧客の課題を解決する具体的な方法やサービスを設計します。
5チャネル商品やサービスを顧客に届ける手段を選定します。
6収益の流れどのように収益を上げるのか、その方法を考えます。
7コスト構造ビジネスを運営するためのコストを計算します。
8主要指標ビジネスの成功を測るためのKPI(Key Performance Indicator)を設定します。
9圧倒的な優位性競合他社に対する独自の強みや優位性を明確にします。

この順番に沿ってリーンキャンバスを埋めていくことで、ビジネスモデルの全体像が明確になり、戦略の策定がスムーズに進むでしょう。

リーンキャンバスの効果的な活用方法

新規事業やスタートアップが成功するためには、アイデアだけでは不十分です。具体的な戦略とその実行が求められます。ここで重要なのが、リーンキャンバスを効果的に活用することです。特に新たなサービスを生み出す際には、このツールが多くの面で役立ちます。

新たなサービスの創出

新規事業やスタートアップでは、新たなサービスや製品を市場に投入することが活動の中心です。リーンキャンバスは、そのような新しいアイデアを形にする際の最初のステップとして役立ちます。アイデアが浮かんだら、まずはリーンキャンバスにその概要を書き込みましょう。自身のアイデアが実際のビジネスにどれだけ適しているのか、初歩的ながらも明確な形で確認することができます。

ビジネスモデルの見直し

市場からの反応や顧客のフィードバックに基づいてビジネスモデル自体を見直す必要が出た時など、サービスを生み出した後にもリーンキャンバスは活用できます。サービスがローンチされた後のKPI(重要業績評価指標)や顧客からのフィードバックを元に、リーンキャンバスを更新することで、事業戦略をより適切なものに修正できます。

企画書の作成と共有

新規事業やスタートアップでは、内外のステークホルダーに対してビジネスプランを明確に伝える必要があります。リーンキャンバスは一枚の紙に全ての要素がまとまっているため、企画書やプレゼンテーション資料としても非常に効果的です。これにより、事業の方向性をスムーズに共有し、必要なリソースや協力を得やすくなります。

新規事業とスタートアップの違い

新規事業とスタートアップ、どちらも新しいビジネスを始めるという点では同じに思えるかもしれませんが、その背景や目的、戦略には大きな違いがあります。ここでは、その違いを明確にし、リーンキャンバスがそれぞれどのように活用できるか確認していきましょう。

新規事業の計画

新規事業とは、既存の企業が新たな市場や製品、サービスに進出する活動です。多くの場合、企業は主力事業以外の新しい分野に目を向け、そこでの成功を目指します。新規事業はリスクが高い一方で、成功すれば新たな収益源となり、企業全体の成長を促進します。新規事業を立ち上げる際には、市場調査、競合分析、財務計画など、多くの要素を綿密に計画しなければなりません。

新規事業を計画する際には、既存のリソースやノウハウが大いに役立ちます。例えば、企業がすでに持っている顧客基盤やブランド力、販売チャネルなどは、新規事業でも有効に活用できる場合が多いです。リーンキャンバスは、このような新規事業の計画段階で役立ちます。リーンキャンバスを用いることで、既存のリソースと新規事業の戦略をどのように組み合わせるか、どのような顧客層にアプローチするか、価格設定はどうするかなど、9つの要素を通じて、具体的なポイントをおさえながら戦略を練ることができます。

スタートアップの戦略策定

スタートアップは、新規事業と異なり企業としてゼロからビジネスを築き上げる活動です。スタートアップにおいては、イノベーションとスピードが非常に重要です。新しいアイデアやテクノロジーを用いて、短期間で急成長を遂げることが多くのスタートアップの目標です。

スタートアップにおいても、リーンキャンバスは非常に有効なツールです。スタートアップでは特に、仮説検証にスピードが求められます。新しいアイデアやビジネスモデルが実際に市場で受け入れられるかどうかを素早く確認する必要があります。リーンキャンバスを用いることで、ビジネスモデルの構築からテスト、そして修正までのプロセスを高速化することができます。このようにして、失敗を早期に発見することで、成功へとつながる方向性を見つけ出すことに役立ちます。

新規事業とスタートアップはそれぞれ異なる特性と課題を持っていますが、リーンキャンバスはどちらのケースでも活用できます。それぞれのビジネスの形態に応じて、リーンキャンバスを使いこなすことで、より成功へと近づけるでしょう。

リーンキャンバスの作成手順

新規事業やプロジェクトを成功に導くためには、計画が不可欠です。しかし、計画を立てる際には多くの要素を考慮する必要があります。ここでは、リーンキャンバスを効果的に作成する手順を詳しく解説します。

目的の明確化

最初のステップとして、何のためにリーンキャンバスを作成するのか、その目的を明確にすることが重要です。目的が不明確だと、どのような要素を重視すべきかがわかりません。例えば、新規事業の立ち上げを考えている場合、その事業が解決すべき問題は何か、ターゲットとする顧客層はどのような人々か、といった点を明確にします。さらに、目的に応じてリーンキャンバスの各要素にどれだけの時間とリソースを割くかも考慮するべきです。目的が明確であれば、後のステップでの作業がスムーズに進むでしょう。

要素の記入

リーンキャンバスには9つの基本要素があります。これらを一つひとつ丁寧に記入していくことが大切です。特に、問題、解決策、主要指標、競合他社といった要素は、事業の成功を左右する重要なポイントです。これらの要素をしっかりと記入し、それぞれの関連性も考慮しながら進めていきましょう。例えば、解決策を考える際には、その解決策が実際に問題を解決できるかどうか、またその解決策が新規である必要があるのか、既存のもので十分なのかといった点も考慮が必要です。

反復と改善

リーンキャンバスは一度作成したら終わり、というものではありません。市場環境や顧客ニーズは日々変わるものです。そのため、定期的に見直し必要な改善を加えていくことが求められます。特に、仮説と結果が一致しなかった場合は、その原因を解析して次のアクションプランを考えることが重要です。この反復と改善のプロセスは、事業が成長するごとに複雑になっていきます。しかし、その都度しっかりと分析し、改善点を明確にすることで、より強固な事業基盤を築くことができます。

ChatGPTを活用してリーンキャンバスを作成する

リーンキャンバスの作成は、新規事業やプロジェクトの成功に重要なステップです。しかし、検討ポイントが明確で簡易化されたフレームワークとはいえ、やはり作成には手間がかかり、時間も必要とします。そこで、ChatGPTを使うことで、リーンキャンバスの作成が劇的に効率化されます。

ChatGPT活用のポイント

ChatGPTは、自然言語処理の技術を活用しています。そのため、人間が普段使う言葉で指示を出すだけで、高度な分析や文章生成が可能です。特に、リーンキャンバスの各要素に対する説明や仮説の生成に役立ちます。ただし、ChatGPTの学習データは2021年9月までの情報しか含んでいない点や不適切な使用方法によるリスクも考慮する必要があることはおさえておきましょう。

サンプルプロンプトの使用

ChatGPTでは「プロンプト」と呼ばれる指示を与える必要があります。プロンプトによって、AIは何を分析し、どのような文章を生成するかを判断します。「リーンキャンバスの顧客セグメントについて説明して」といった指示が可能ですが、必要とするアウトプットを明確にした上で、丁寧に指示を与える必要があります。プロンプトエンジニアリングとは、このプロンプトを最適化する技術です。具体的な指示だけでなく、プロンプトの言い回しや語順、与える情報などにより結果に影響を与えるため、プロンプトの最適化が求められます。

プロンプト例:リーンキャンバスの作成指示(一部抜粋)

# 命令書​
あなたは、成功するビジネス ソリューションに特化したビジネス分析とプロセス最適化のビジネスアナリストの専門家です。
リーンキャンバスの9つのブロックを# 制約条件 で # 入力文 について # 出力文 に忠実に従って出力してください。​
※役割や指示内容を明確にする。

​# 制約条件​
・[1.顧客の課題]及び[2.顧客セグメント]は、BtoB、BtoCの両方を検討してください。​
・[3.価値提案] は、アーリーアダプターの最も重要な課題から考えてください。​
・[3.価値提案] は、機能よりも利点に注目して考えてください。​
・[5.チャネル] は、どのようなチャネルで、どのようなタッチポイントがあるのか。ユーザーの導線をイメージして拡散手段を検討してください。​

(…続く)
※リーンキャンバスの各項目を作成する際のガイドラインや条件を示す。

​# 入力文​
[サービス名]: {ComicGuide}
[市場]: {訪日外国人旅行者}​
[ターゲット] : {日本のアニメ・漫画好き}​
[課題] : {日本のアニメ・漫画に関するスポットを知りたい}​
[解決策] : {アプリを開発し、訪日外国人旅行者が行きたい漫画スポットを簡単に検索できるようにする。アプリ内では、スポットの詳細情報や周辺のおすすめスポットも紹介する。また、AR技術を活用して、実際にその場所に行った時に漫画のキャラクターが現れる「AR漫画スポット」も設置する。アプリの収益源は、スポットの広告掲載やAR漫画スポットの入場料など。}​

※ここではサービスの概要を提供する。

​# 出力文
・出力の際には、下記の形式に従ってください。​
—–​
リーンキャンバス {サービス名}
[1.顧客の課題] (顧客の課題内容を箇条書きで重要なものから上位5つ以上)​
[2.顧客セグメント] (顧客セグメント内容を箇条書きで5つ以上)​
[3.価値提案] (価値提案内容を箇条書きで5つ以上)​
[4.ソリューション] (ソリューション内容を箇条書きで5つ以上)​

(…続く)
※出力するリーンキャンバスのフォーマットを示す。


配布しているChatGPT用プロンプトで詳細をご確認いただけます。無料でダウンロードいただけます。

出力結果

※ChatGPT(GPT-4)での生成結果

GPT-3.5とGPT-4の違い

ChatGPTを活用することで、リーンキャンバスに必要な事業分析を素早く実行することができます。特に、ChatGPT PLUS(サブスクリプション/有料版)では、プラグインを使うことでWEB上にある情報を取得することができます。情報源の信頼性やデータの正確性は確認が必要ですが、取得したデータをリーンキャンバスに反映させることもできます。

GPT-3.5とGPT-4によっても性能は大きく異なります。GPT-4は、ライティングや推論、コーディングにおいてGPT-3.5を上回っています。また、処理できるトークン数が大幅に多く、大量のテキストデータを活用することが可能です。ChatGPT PLUSを利用すれば、月額20ドル(約2,700円)でGPT-4を活用できます。

まとめ

新規事業やプロジェクトを成功に導くためには、戦略的な計画と実行が不可欠です。リーンキャンバスはそのひとつの手法であり、とても便利なフレームワークです。しかし、効果を最大限に引き出すためには、適切な活用しなけれななりません。今回ご紹介したChatGPTの活用は、リーンキャンバスの作成や事業分析をより効率的かつ高精度に行うためのひとつの方法です。また、学習データの限界や悪用の危険性など、ChatGPTの課題を理解したうえで活用する必要があります。

どんなに優れたツールやフレームワークを用いても、それらはあくまで手段であり目的ではありません。大切なのは、それらをどのように自社のビジネスに適用するかです。リーンキャンバスもChatGPTも、その使い方次第で大きな可能性を秘めています。

今後もさまざまなツールや手法が誕生してくると思いますので、ぜひ自身の手で積極的に活用していってください。

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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