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BtoBマーケティングの階段設計|CVポイントの並べ方と5パターン

BtoBマーケティングの階段設計とは、見込み客が登る段を、飛躍が起きない順に並べる作業です。まずやることは1つで、段を足す前に、落差が最大の1か所を選んで直します。この記事では、買い手の行動から段を逆算する方法と、止まっている段の見つけ方、5つのパターンを説明します。

BtoBマーケティングの階段設計とは

リード(連絡先の分かった見込み客)や商談の数が足りないとき、詰まっているのは段の並び方であることがあります。階段設計で決めるのは、その段と段の距離です。BtoB は購買に関わる人数が多く、1回の接触で契約まで進むことはまずありません。

だからこそ、途中に段を置いて少しずつ関係を進めます。この段の連なりを「ファネル」と呼ぶこともあります。呼び名は違っても、決めるのは段の高さと順番で同じです。

なぜBtoBでマーケティングが要るのかという前提はBtoBマーケティングの重要性に、BtoC との違いそのものはBtoBとBtoCの購買行動の違いに書きました。ここでは段の設計に絞ります。

では段はいくつ置けばよいのか。出典のある基準を見つけられなかったので、私の見立てとして書きます。中小企業が無理なく回せるのは、入口から契約までで3段から5段です。

この数は商材で動くと思います。単価が高く、検討が半年を超える商材ほど段は増えます。関わる人が増え、社内を通すための材料もその都度必要になるからです。

逆に、数万円で担当者の裁量で決まる商材なら3段でも多いくらいです。段を増やすほど、中身を作り、更新し、反応を見る手間が増えます。手が回らなくなった段は放置され、そこで止まった人はそのまま消えます。

数を足す前に、いま置いている段を全部運用できているかを確かめてください。

CVポイントは段の連なり

CVポイント(コンバージョンポイント)とは、見込み客が匿名の訪問者から、名前と連絡先の分かる相手に変わる地点です。資料請求フォーム、ウェビナー申し込み、無料トライアルの登録などがこれにあたります。

1段ぶんの作り方には、すでに定まった型があります。HubSpot は公式ブログで、コンバージョンパスを「匿名の訪問者が既知のリードになるまでの過程」と定義しています(HubSpot 公式ブログ)。

構成要素は CTA(行動を促すボタンやリンク)、ランディングページ、終点となるコンテンツオファー、サンクスページの4つです。ランディングページには、連絡先を受け取るためのフォームを置きます。

ただしこの型で分かるのは1段の作り方までです。段をどう並べるかは、別に決める必要があります。フォームの項目を減らしても、その段が見込み客にとって高すぎるなら、登る人は増えません。

この記事で扱うのは、その段どうしの間隔です。

階段設計という考え方の出どころ

この考え方は、栗原康太氏の『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎、2020年)で整理されています。見込み客が不安なく登れるように、段の間に細かいステップを設ける、という発想です。

似た発想は海外の実務にもあります。SiriusDecisions(現 Forrester)の Demand Waterfall がその一例です。需要の流れを段階に分けて管理するモデルを指します。

同社の公式ブログには「2006年のデビュー以来、数え切れないほどの B2B 組織で採用されてきた」とあります(Forrester のブログ記事、Jessica Lillian、2017年5月17日)。

注目したいのは、このモデルが3世代にわたって作り替えられている点です。第3世代の Demand Unit Waterfall は、購買判断がチームで行われる実態に合わせて設計し直されました。購買グループと直接つながる前の段階まで追跡できる形です(Forrester のブログ記事、Terry Flaherty、2018年5月1日)。

つまり階段は、作ったあとに並べ替える前提で持つものです。自社の買い手が実際にどう動いているかが、並べ方を決めます。

この並べ替えを社内の役割ごとに割り振ったのがTHE MODEL の営業4工程です。マーケティング、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスの4つに分けます。福田康隆氏の『THE MODEL』(翔泳社、2019年)が原典です。

5段の階段を側面から見た図。段と段の距離を矢印で示し、そのうち1か所を強調している

リード数と商談数が止まる原因

原因は大きく2つに分かれます。段と段の間に飛躍があるか、段は並べたが誰がどこにいるか分からないか、のどちらかです。

段と段の間に飛躍がある

支援の現場では、CVポイントとして「無料トライアル」だけを置いている会社を何度か見てきました。この場合の流れは、無料トライアル、商談、本導入の3段になります。

しかし無料トライアルは、実は高い段です。触ってみるには社内の誰かの時間が要りますし、うまくいかなかったときの説明も必要になります。まだ課題も固まっていない相手には、いきなり一段跳びを求めていることになります。

段を割るなら、資料請求や導入相談を前に置きます。そのうえで商談を挟み、無料トライアルに進む順にします。

ブログ記事の下に「詳しくはお問い合わせください」とだけ書いている場合も同じです。お役立ち情報を読みに来た人には、より詳しい資料の請求を次の段に置きます。事例を聞けるウェビナーへの参加でも構いません。

段を割るときは、買い手が誰と一緒に情報を見ているかも考えます。ここで Gartner が出しているのが1.8倍という数字です。

提供元のデジタルツールを営業担当者と一緒に使った買い手の話です。Gartner は、単独で使う場合より質の高い取引を成立させる確率が1.8倍高いとしています(Gartner「The B2B Buying Journey」、2026年8月時点。ただしこの解説ページは調査の実施年も回答者数も公表していません)。

同じ解説ページで Gartner は、B2B の買い手の75%が営業担当者のいない購買体験を好むとしています。一方で、セルフサービスだけで進めた購買は購入後に後悔する確率がはるかに高いとも書いています。

この75%という割合は、調査によって動きます。同社が2025年8月から9月に B2B バイヤー646名へ実施した調査では、67%でした(2026年3月9日発表、Gartner のプレスリリース)。

どちらが正しいかを決める材料はありません。設計に効くのは、7割前後で動くという幅のほうです。裏を返せば、買い手の3割前後は今も営業と話しながら進めたいことになります。

買い手は営業に会わずに進みたい。しかし営業のいない購買は後悔しやすい。この2つは一見矛盾しますが、ここから設計の方向が1つに決まります。

階段は、無人で進める段と人が伴走する段を、正しい順番でつなぐ形になります。どこで人が出るかを決める作業だと言い換えてもいいです。

同じ文脈でよく引用される「購買プロセスの57%は営業に会う前に終わっている」という数字も、扱いには注意が要ります。出どころは CEB Marketing Leadership Council と Google が2012年に公開した調査で、実施は2011年、対象は大企業22社の意思決定者・影響者1,500名超でした(Think with Google の調査資料)。

15年前の数字で、母集団も大企業に偏っています。57%は平均値で、原典の分布は51%から70%超まで散らばっています(最も多いのは56〜60%の8社)。自社の階段を設計する根拠は、自社の実データから取ってください。

入口はあるのに記録の土台がない

段を増やしても、誰がどの段にいるかを記録していなければ、どこで止まっているかは分かりません。そして中小企業では、この記録の土台が入口より大きく遅れています。

中小企業庁『2025年版 中小企業白書』の第1-1-42図に、その差が出ています。対象は、白書がデジタル化の段階2と呼ぶ層(ホームページなどは整備済みで、業務のデータ化はこれからの企業)12,869社です。「自社ホームページの作成・更新」を実施しているのは60.3%でした。

一方で「顧客データの一元管理」は16.3%、「営業活動や受発注管理のオンライン化」は13.9%にとどまります(いずれも複数回答)。資料は帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」です。

同じ白書の第1-1-41図によると、この段階2の企業は全体の52.3%を占めます(24,588社、中小企業庁『2025年版 中小企業白書』。いずれも2024年時点の断面で、白書は調査間の単純比較はできないと注記しています)。過半数の会社にとっては、段を足すより先に記録の土台へ着手するほうが速い計算になります。

入口となるホームページは用意できています。その先の記録が空白のまま、という会社が多いのです。商談まで進んだかどうかは、担当者の記憶とメールの検索履歴の中にしか残りません。

階段設計は、記録があってはじめて回ります。段を足す前に、誰がどの段にいるかを1つの場所に集めてください。

集めた記録から次の連絡を自動で出す仕組みが MA(マーケティングオートメーション)です。その中心は、どの段の人に何を送るかを決めるシナリオ設計にあります。

左は段が2つしかなく大きな飛躍がある階段。右は4段に割れているが、各段にいる人が点線で描かれ誰がどこにいるか記録されていない状態

CVポイントの並べ方

段は、買い手が実際にやっている仕事の順に並べます。まず決めるのはこの順番で、個々の段の出来はその次です。

前章で見た飛躍と記録の詰まりは、この順番を買い手に合わせることで避けられます。BtoBマーケティングの全体像を、買い手の購買プロセスに沿って描き直す作業だと考えてください。

買い手がやっている6つの仕事から逆算する

Gartner は同ページで、B2B の購買を6つの仕事(buying jobs)として整理しています。課題の特定、解決策の探索、要件の定義、提供元の選定、検証、社内の合意形成の6つです。

重要なのは、この6つが一直線に進まない点です。同社は、買い手がそれぞれの仕事を最低1回は行き来するとしています。要件を決めてから課題定義に戻る、検証してから探索に戻るといった往復が普通に起きます。

だから階段も、上に登るだけの一本道にはできません。戻ってきた人が、また同じ段から登り直せる形にしておく必要があります。

買い手がやっている仕事自社が置ける段の例
課題の特定課題別の解説記事、自己診断シート
解決策の探索手法をまとめた資料、比較の観点を示すコンテンツ
要件の定義導入要件のチェックリスト、事例セミナー
提供元の選定個別相談、デモ、見積
検証無料トライアル、小規模な試験導入
社内の合意形成稟議用の資料、費用対効果の試算

この表から、自社の並びを1本作ります。私がよく使うのは、解説記事、資料請求、ウェビナー、個別相談、無料トライアルの順です。契約はその先にあります。

このうち連絡先が残る CVポイントは資料請求から先の4つで、解説記事は入口として置いています。ここから商材に合わせて増減させてください。無料トライアルのない商材なら4段になりますし、稟議に時間がかかる商材なら合意形成用の資料を1段足します。

もう1つ、入口の性質が変わりつつある点にも触れておきます。先ほどの646名の調査には、45%が直近の購買で AI を使ったという回答もありました。

少なくとも半数近くが、検索結果を一覧で比べる前に要約された答えを受け取っているということです。増えているのかどうかは、比べられる過去の調査がないので分かりません。

それでも最初の段に置くコンテンツには、要約されても意味が残る書き方が要ります。買い手の動きを時系列で書き出すカスタマージャーニーの作り方は、この逆算をひと通りの手順にしたものです。

ハードルを下げすぎたときに起きること

低い段ばかりを並べると、登る人は増えます。同時に、登った先で止まる人も増えます。

自社がどんな顧客と取引したいのか。その顧客はどんな関わり方を望んでいるのか。結果から逆算して段を決めないと、リードの数だけが積み上がります。

私は普段、生成AI研修と THE MODEL の導入支援を仕事にしています。2026年7月に、過去に接点がありながら止まっていた相手17件へ、個別の短いメールを送りました。前回その人が話していた「まだ終わっていない論点」を名指しで問うだけの構成にし、売り込みも添付資料も入れていません。

返信は6件でした。残る11件の内訳は、無料のリモートコンサルティングだけを提供した相手が3件、有償の取引があった相手が8件です。お金を払った相手なら返ってくる、という単純な話ではありませんでした。

無料で関わった3件がすべて沈黙したことは気になります。ただ17件では傾向とも呼べませんし、相手の性質のせいにすると打つ手がなくなります。それより、無料で関わったあとに次の段を用意していなかったのではないか、と自分の設計を疑うほうが直せます。

返ってきた6件には、社内の実態を詳しく書いた長文が多く含まれていました。受注は出ていません。代わりに、各社の内部で今何が起きているかが分かり、それが次の提案の材料になりました。

段を下げること自体は悪くありません。ただし下げた段の先に何を置くかを決めていないと、名簿だけが増えます。次の段へ案内する文面をどう組むかは、メールマーケティングのポイントで書いた手順が使えます。

担当者が社内で使う材料

BtoB の最後の段を登るのは、多くの場合その担当者ひとりではありません。Gartner の調査(B2B バイヤー632名)によると、購買グループは5人から16人で、最大4つの職能にまたがります(2024年8月〜9月実施、2025年5月7日発表、Gartner のプレスリリース)。

同じ調査で、購買チームの74%が意思決定中に「不健全な対立」を示すと報告されています。目的が衝突したり、最善策で合意できなかったり、外部の意思決定者に決定を覆されたりする状態を指します。

同じ調査には、直感に反する数字も出ています。Gartner は、購買グループ単位に合わせた情報提供が合意形成に約20%のプラスに働き、個人単位に最適化した情報は合意形成を59%押し下げるとしています。

動くのは売上でも商談数でもなく、購買チーム内で合意に至る度合いです。ただし、何を分母にした百分率なのか(差分なのか相対値なのか)まではプレスリリースに書かれていません。数字の幅ではなく、向きだけを読んでください。

私はこれを、パーソナライズの向きが逆だという警告だと受け取りました。担当者ひとりの興味に合わせた資料はその人には刺さりますが、持ち帰った先の4人には通じません。

だから最後の段には、担当者が社内で使える資料を置きます。次の3つが入っていれば、担当者は稟議を書けます。

  • 費用の内訳
  • 想定される反対意見への答え
  • 導入後に誰が何をするか

この資料は、担当者だけでなくその上司や他部門にも読まれます。読み手が広がる前提で作る点は、中小企業のコンテンツマーケティングで扱った設計と地続きです。

解説記事から資料請求、ウェビナー、個別相談、トライアルへ進む5段の並び。個別相談から資料請求へ戻る線もあり、買い手が行き来することを示す

階段のボトルネックを見つける手順

止まっている段は、段ごとに数えて落差の大きい場所を1つだけ選べば見つかります。逆に言えば、全体の合計を眺めている限りは見つかりません。

段ごとに数える5つの手順

私は自社の無料eラーニング講座で、3段のCVポイントを置いて運用しました。申し込みフォームからの無料登録、30分の説明面談の予約、個別コンサルティングの3つです。回してみると、最初の段は通るのに次へ進まない層が出ました。

各段の到達人数はここでは公開しませんが、段を分けていたので落ちている場所は一目で分かりました。そこで面談の申し込みを促すリマインドの連絡を後から足しました。

一方で、フォーム送信から返信までに時間が空いてしまい、案内の冒頭で遅れを詫びる回もありました。この回では、段そのものより段と段の間をどれだけ早く埋められるかが効いていた、というのが私の受け取り方です。

この経験を手順にすると、次の順になります。

  • 段を全部書き出す。自社サイトと営業活動の両方から、名前と連絡先が残る地点を漏れなく並べます。1枚の紙に横に並べるだけで構いません。
  • 段ごとに人数を数える。直近3か月の到達人数を、ツールがなければフォームの受信メールを数えて出します。
  • 各段の平均待ち日数を測る。その段を登ってから次の連絡が届くまで、何日かかっているかを段ごとに出します。人数の落差と同じくらい、この日数が原因になっていることがあります。
  • 落差が最大の1か所を選ぶ。他の段の半分以下の到達率になっている段が最初の候補だと思います。同時に複数を直すと、何が効いたか分からなくなります。
  • 1か所だけ直す。段が高すぎるなら間に低い段を挟み、高さが妥当なら待ち日数のほうを縮めます。

担当は1人で足りると思います。マーケティング担当がいなければ、営業責任者が兼務して構いません。集計も月1回、1時間ほどの作業に収まるはずです。

見直しの周期は4週間、1周につき1か所だけ直します。表計算ソフトがあれば始められます。専用ツールは、段の数と人数が増えてから検討しても間に合います。

4週間後の判定と次の一手

4週間たったら、同じ数え方でもう一度数えます。ここで「変化なし」の線をどこに引くかを、先に決めておいてください。

その段の到達人数が前の4週間から1割も動かなければ、変化なしと扱ってよいと考えています。母数が小さい段では、数人の増減が偶然でも起きるからです。

改善しなかったときに疑う順番も決めておきます。まず段の高さ、次に待ち時間、最後に訴求文です。

段の高さは、前に低い段を1つ挟んでみれば試せます。待ち時間は、フォーム送信から最初の返信までの日数を数えれば分かります。訴求文の書き直しを最後に回すのは、文言は効果が読みにくく、直した実感だけが残りやすいからです。

段の設計を見直す前に、なぜ買い手が動き出したのかも押さえておくと精度が上がります。Gartner は同ページで、B2B の購買の99%が組織の変化をきっかけに始まるとしています。人事異動やシステムの更新期限、新しい規制への対応などがこれにあたります。

こうした変化を初回のヒアリング項目に入れておくと、どの段でどんな情報が要るかを当てやすくなります。

数えるときは常に全体で見てください。CPA(顧客獲得1件あたりの費用)や個々のCV率(その段を登った人の割合)だけを追うと、部分最適に寄ります。

1つの段のCV率が上がった分だけ、その先の段で止まる人が増えることもあります。最後に見るのは商談の数です。

1人で回しきれない規模になったら、BtoBマーケティングのプロジェクトの進め方の段取りに載せ替えてください。

段ごとの到達人数を示す棒グラフの一般的な例。登録、予約、面談、契約と進むにつれ減り、面談から契約への落差が最も大きい

商材側の階段を増やす5つのパターン

段は、商材そのものを分けても増やせます。売る単位を小さくすれば、それ自体が低い段になるからです。栗原氏の前掲書では、BtoB でよく使われるパターンが5つ挙げられています。

パターンの分類は栗原氏の前掲書によります。具体例は各社の公開情報から私が選んだもので、製品の優劣を比べる意図はありません。

なお前半で無料トライアルを「高い段」と書きましたが、これは入口から見た場合の話です(商材の並びの中では、最初の低い段にあたります)。

パターン何を下げるか向く商材具体例
無料トライアル期間を設ける使う前の不安触れば価値が伝わるツールサイボウズの業務アプリ構築サービス「kintone」は、契約前に無料で試せる期間を用意しています(料金ページ、2026年8月確認)
返金保証を付ける失敗したときの損失1件増やすときの追加費用が小さい商材返金保証を付けたうえで、初日から課金する設計が取れます
一部機能を切り出して廉価版を売る初回の支払い額機能が積み上げ式のサービスHubSpot は上位プランとは別に、機能を絞った入門プランを併売しています(料金ページ、2026年8月確認)
一部作業を代行する導入側の人手不足初期設定や移行に手間がかかる商材初期設定やデータ移行を売り手側が請け負う形です。無償で付けるか、有償のメニューとして切り出すかを選びます
課金方法を変える一度に出ていく金額総額が大きく一括では決裁が通らない商材総額は変えずに、月額の分割やサブスクリプションに切り替えます

パターンごとの注意点

ここからは私の見立てです。出典のある知見ではなく、支援の現場で見てきた範囲の判断として読んでください。どのパターンも、下げた段の先に何を置くかまで決めて初めて働きます。

無料トライアルは、期間中に誰がどう伴走するかを決めてから出します。放置されたトライアルは、断る理由を相手に与えるだけです。次の段は本契約ではなく、期間中の個別相談に置くほうが自然につながります。

返金保証は、条件と期限を最初に明示してください。あとから条件を足すと、保証そのものが不信の材料になります。保証で入った相手の次の段は、使い続ける理由を一緒に確かめる場です。

廉価版は、上位プランとの差を機能で説明できるようにします。差が曖昧だと、上位を検討していた相手まで下に流れます。

作業代行は、範囲を書面で区切ります。曖昧なままだと、際限のない無償対応になります。代行が終わった直後が次の段で、そこで本格的な導入の相談に移ります。

課金方法を変えるときは、総額と支払回数を並べて見せてください。月額だけを見せると、総額が分かった時点で止まります。分割で入った相手には、上位プランや追加分を次の段として用意しておきます。

なお廉価版は、既存サービスの一部を別の形にして売る発想でもあります。コンサルティングのノウハウを切り出し、教材として販売するのも同じ考え方です。

どのパターンから試すか

廉価版と作業代行は、休眠顧客に効くことがあります。一度は検討したものの、金額か人手のどちらかで止まった相手がいるからです。既存メニューを再提案するより、その障害を外した新しい段を用意するほうが動きます。

ただし、段を足すこと自体が目的になると本末転倒です。どの段も、その先の段につながっていなければ意味がありません。新しい段を作る前に、そこを登った人が次にどこへ行くかを決めてください。

新しい段を用意したら、そこに人を集める手段も要ります。BtoBのリードを獲得する方法で挙げた手段のうち、その段に合うものを選んでください。

商材側で入口を下げる5つの型。お試し、返金保証、廉価版、代行、分割をカードで並べた図

まとめ

BtoBマーケティングの階段設計は、集客を増やす前にやることの整理です。

段は買い手の仕事の順に並べます。課題の特定から社内の合意形成まで、買い手は行き来しながら進むからです。売り手の都合で並べると、途中に飛躍ができます。

ただし、記録がなければ止まっている段は見えません。中小企業では入口となるホームページはあっても、顧客データの一元管理まで進んだ会社は限られます。段を足す前に、誰がどの段にいるかを1か所に集めてください。

そして最後の段は、担当者の社内説明を助ける形にします。持ち帰った担当者が使える資料になっていないと、購買チームの中で止まります。

自社の階段のどこに落差があるかを整理したい方へ、資料請求ページからサービス資料をお送りします。THE MODEL の考え方に沿った設計手順と、支援の進め方をまとめています。

出典:栗原康太『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』すばる舎(2020年)。

福田康隆『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』翔泳社(2019年)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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