THE MODEL

THE MODELとは?(3)インサイドセールスの役割と実践プロセスを解説!SaaSビジネスで生産性を最大化する方法

SaaS全盛期のいま、サブスクリプション型のビジネスも私たちの生活のあらゆる分野に登場するようになりました。ユーザー側として使い方を理解していても、ビジネスとして生産性を最大化させていくには、従来の営業手法では限界があり、SaaS時代のフレームワークにアップデートが必要です。

そこで、今回は、SaaS・サブスク時代に必須のフレームワークである「THE MODEL」について、その概要や、必要な背景を解説していきます。

実際のビジネスですぐ応用するためのWorkも用意していますので、ご自身のビジネスと照らし合わせながら理解を深めることが出来ます。

この記事でわかること

  • インサイドセールスの役割や需要が拡大する背景
  • インサイドセールスのタイプやプロセス
  • 業務のポイントやKPI

インサイドセールスの役割

インサイドセールスは、相手先を訪問しない内勤型営業のことを言います。電話やメール、SNS等を利用して、非対面でコミュニケーションを取っていきます。

需要も重要性も増すインサイドセールス

インサイドセールスは、将来のお客様が出会う最初の接点であるため、会社の代表であり、その体験が企業の評価に直結すると言えます。だからこそ、カスタマーサクセスを実践すべき部門であり、これが抜け落ちた瞬間に単なるテレアポと化します。

リードをフォローして商談化するという役割だけでなく、顧客は検討段階でどのような課題を抱えているのか、自分がどのような情報提供やアプローチをするのが最も良い顧客体験を提供できるのかを模索し、会社のメッセージ、製品の内容を正しく市場に伝えることも重要な役割です。

働き方の変化や、サブスクリプションの台頭による対面型営業のコストパフォーマンスの悪さ、非対面ツールの充実により、ますますインサイドセールスの需要が拡大しています。従来のフィールドセールスだけでなく、カスタマーサクセスをサポートし、自社の売り上げに欠かせないスペシャリストとしてのインサイドセールスが求められているのです。

商談供給の調整役

営業から求められる役割として、「商談供給の調節弁」の側面もあります。営業部門の処理能力には、人事異動や新規採用、退職、新製品投入、トラブル対応など様々な変数があり、常に変動します。そのようなところへ常に同じペースで商談を供給しても、フォローされない商談が滞留したり、商談が不足することも生じてしまいます。

だからこそ、どこにボトルネックが発生しているかなどを見つつ、常にこの基準を調節し続けるインテリジェンス集団がインサイドセールスである。

上記のように、求められる役割も高度化しており、データだけではわからない市場の肌感覚をつかみ、マーケティング部門や経営陣などにフィードバックする大事な部門だからこそ、会社が投資して教育する必要がある。

インサイドセールスの3つのタイプ

①問い合わせからお客様との商談の機会を創出するSDR

広告からの問合せやイベントなど、マーケティング活動で獲得した見込み顧客の個人情報を受け取り、電話やメールでアプローチをします。見込み顧客との関係性を構築し、必要な条件(予算、決済権、必要性、導入時期など)とタイミングがそろった時点で営業へ引き継ぎます。リサイクル(過去に獲得した古いリードや、過去に失注した商談など)へもアウトバンドコールも実施する。SDRは中小企業やスタートアップをターゲットとする場合が多い。

②ターゲット企業を選定し、手紙やアウトバンドコールによって商談機会を創出するBDR

大手企業をターゲットとするのが一般的。大手企業は、担当者が上司を納得させるまでには様々なハードルがあり、受注可能性が低いため、役職者と商談することが受注への近道となります。よって、ターゲット企業を選定し、該当する役職者や役員に直接アプローチするBDRが必要なのです。

③客先に訪問せずにオンライン商談を進め、最終的な契約締結までを行うオンラインセールス

近頃は規模や業種にかかわらず、オンライン商談が非常に多くなり、生産性が向上しました。これだけ市場が拡大しているオンライン商談ですが、今までと違うスタイルでの商 談であり、単純に訪問しなくなっただけ、ではありません。環境準備や事前確認、事後の振り返りなどより細やかさが求められます。

①~③の必要性は、主に商材の金額等、企業によって異なります。高額商品の場合は分業タイプが最適です。売り切りモデルの低単価の製品は独立モデルで十分対応が可能です。

インサイドセールスの新たなプロセス

いわゆる「テレアポ」のイメージが強いが、MAの普及により、インサイドセールスの仕事が飛躍的に高度化しています。

リードスコアリング

一定の基準を満たしたリードだけを次の工程に引き渡し、後工程の作業効率を高めるという手法。実際のリードスコアリングは、以下の2つの観点で行われます。

属性スコア

企業規模、業種、役職など属性情報によるスコアリング(理想的な夕ーゲット)

行動スコア

ウェブサイトヘのアクセス、コンテンツのダウンロードなど行動情報によるスコアリング(購買意欲)

ここで大事なのが、属性スコアで絞り込みを行った後、購買意欲が高まったものを検知し、インサイドセールスや営業にパスするための仕組みです。スコアリングの目的は、大量のリードの中から相対的にフォローすべき大正をみつけること。そのため、絶対値でなく、閾値の設定がカギとなるのです。(例えば、50点を超える場合は購買意欲があるとみなして、有望リードと設定するなど)

リードフォローのタイミングの自動化

MAによって、リードフォローのタイミングを設定し、アプローチを自動化することもできるようになりました。無料トライアルなら一通り試してみるのに1週間くらいかかる可能性もある一方で、セミナー参加者であれば、忘れないうちに翌日すぐにでも感想を聞いてフォローする方がよく、ソース毎にフォローの適切なタイミングが異なります。

リードソース毎に適切なフォローのタイミングを設定し、自動で対応することで業務効率が格段に上がります。

事前情報に基づいたセールス

作業負担が軽減された分、事前調査に時間を割くことが出来るようになりました。さらに、トラフィック情報を取得できるようになったため、従来であれば属性情報しかわからなかったが、相手の興味に沿ったセールスが可能となっています。

リサイクルリードの定期的な掘り起し

購入は今ではないというリードは新規リード全体の65%に上るというデータがありますが、インサイドセールスが成果を出すためには、この65%をどれだけ商談化できるかにかかっています。MAでは「検討が半年先」「予算がない」など理由を分類してリサイクルに回すと、理由に合わせて適切なコンテンツが配信され、リードスコアが上がってくると再度フォローリストに追加されるという仕組みが構築できる。

ステージ設計

細かく管理すると現場の負担が高まり、インサイドセールスのデータ更新の精度が落ちるため、必要最低限のステータス管理にとどめるやり方をおすすめします。

リードをステージ管理するメリット

  • フォローの順番が決めやすい
  • ステージごとに話す内容が絞れるため準備がしやすい
  • インサイドセールスの負荷分散がしやすい

業務のポイント

業務時間も限られており、新規のリードが日々流入すると同時に、過去のリードはたまっていく一方なので、インサイドセールスはタスク管理が重要になる。次の3つのポイントを確認していきましょう。

  1. 前日の業務終了時には、翌日のコール対象リストが条件別に整備されて明確になっている
  2. コール前に対象リードの情報を頭に入れておくこと
  3. 会話できた場合も最大時間を決めておく。(相手が話好きな人の場合、商談に結びつかない会話がダラダラと続いてしまうケースもある。電話をかけても断られる確率が高いので、つい嬉しくなって長く話に付き合いがちだが、商談のクオリフィケーションに必要な項目を常に頭に入れて、タイムマネジメントされた会話を行うこと)

インサイドセールスに必要なKPI

  • リード数(有効リード数、リードソース別のリード数)
  • リードのフォロー完了率
  • 各リードからの商談獲得率
  • 架電数(着電数*)
  • メール送信数(到達数、開封数、URLのクリック数)
  • 架電数とメール送信数を合計したアクション数
  • 商談獲得件数
  • 商談獲得金額
  • 有効商談数(商談化数)
  • 受注件数
  • 受注金額

商品特性や、インサイドセールス部門の状況(メンバー構成や熟練度、繁忙期等)も考慮していきましょう。

実践例

MAツールを活用したアクション事例

KGI:リードの増加
KPI:webセミナーの申込数

シナリオ作成

MAツールを利用して、顧客それぞれのアクションを想定したシナリオを作成。それに合わせて、顧客に合わせた内容のメールを作成し送信。セグメントや開封状況に合わせて、案内の再送や配信停止などを自動で行います。

(Hubspotでのシナリオ作成例)

スコアリング

見込み客に対して、スコアリングを実施することで、購入意欲を数値化。セールス部門へ購入可能性が高い見込み客の情報を引き渡すことができます。また、顧客が育っていない、適切なステージでない状態での不適切なアプローチを防ぎ、リード離れを防ぎ、営業の効率化を図っていきます。

まとめ

  • インサイドセールスは、将来のお客様が出会う最初の接点であるため、会社の代表であり、その体験が企業の評価に直結する。
  • インサイドセールスの需要は拡大しており、カスタマーサクセスをサポートし、自社の売り上げに欠かせないスペシャリストとしてのインサイドセールスが求められている。データだけではわからない市場の肌感覚をつかみ、マーケティング部門や経営陣などにフィードバックする大事な部門だからこそ、会社が投資して教育する必要がある
  • インサイドセールスでの新たな業務プロセスとして、MAも活用したリードスコアリングやリードフォローのタイミングの自動化、リサイクルリードの定期的な掘り起しなどがある。
  • 限られた業務時間で如何に効率よくアプローチできるか、タスク管理やタイムマネジメントが重要である。

Work

  1. 自社の商品やサービスには、どのようなインサイドセールスのステージ設計が必要かを整理してみましょう。
  2. リサイクルの対象になるリードの件数を具体的に計算してみましょう。
  3. 現状でできていること、今後改善が必要な点を洗い出し、誰がどのような流れで業務を行っていくか、実行できる計画を立てていきましょう。

出典:
福田康隆『THE MODEL (MarkeZine BOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』株式会社翔泳社(2019)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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