SaaS全盛期のいま、サブスクリプション型のビジネスも私たちの生活のあらゆる分野に登場するようになりました。ユーザー側として使い方を理解していても、ビジネスとして生産性を最大化させていくには、従来の営業手法では限界があり、SaaS時代のフレームワークにアップデートが必要です。
そこで、今回は、SaaS・サブスク時代に必須のフレームワークである「THE MODEL」について、その概要や、必要な背景を解説していきます。
実際のビジネスですぐ応用するためのWorkも用意していますので、ご自身のビジネスと照らし合わせながら理解を深めることが出来ます。
THE MODELでのマーケティングの役割
マーケティング部門の役割は、オーケストラの指揮者に例えることができます。従来は、商談を作るまでと考えられていた役割も、現在ではカスタマージャーニー全体をサポートする役割に変わりつつあります。
オンラインの情報が圧倒的な勢いで増え、顧客が接するチャネルが多様化する中で、それぞれの担当者が自己主張してコミュニケーションを取ってしまうと、奏でる音楽は台無しになり顧客は離れてしまいます。リードから見込み客、購入後まであらゆる顧客ステージにおけるコミュニケーションの指揮者として機能する必要があるのです。
従来からの変化
今までは「商談を作るまで」が役割とされてきました。無料トライアル、事例集など、なんらかの資料が見たいなら顧客がフォームへ情報入力が求められ、企業側に主導権がありましたが、現在では情報収集と選択の主導権は顧客へと移っています。オンラインの行動がトラッキング可能となっているため、顧客のステージに応じて、コンテンツを分けて提供していくやり方が主流となっています。
プロセス
どの部門でも共通するのが「測定可能にする」ということ。マーケティングはとりわけ測定しにくい部門でしたが、顧客が確実にそのステージにいることを判定する客観的な指標を得ることがステージ設計のポイントです。
また、見込み客はステージを1つずつ順番通りに進んでいくわけではないということもプロセスで留意する点です。それらを踏まえて、留意すべきプロセスが以下に記します。
ファストパス
ステージを飛ばすルート明確なターゲットである企業が自主イベントに参加した場合、「リード育成」のプロセスを経ずにアポイントへ移ります。すでに他社と比較をしており、具体的な見積もりがほしいというケース
リサイクル
すぐに商談にならなかったリードや、営業が失注した商談を、再びマーケティング対象とするための迂回路営業が商談化したが、当面検討が進まないことが明確な場合は、リサイクルの箱に入れてプールしておきます。検討を中止するという顧客には一定期間メール配信を止めるなど。
育成対象外
リサイクルするのではなく、そこで終わりにする。このようなステージをデッドエンドと呼びます。学生、競合、退職者などのリード等。
ステージ設計
実際に数値化して、各ステージごとのフローと残高を表にすると以下のようになります。各ステージを明確に定義し、単月のフローの数字だけでなく、残高を見るようにすれば、どこにボトルネックがあるかが手に取るようにわかります。
ステージ後のステップ
マーケティング部門は、リード獲得のプレッシャーから、セミナーや広告、キャンペーンなどの施策から考えてしまいがちです。でも、これでは順序が逆で、真の目的は、見込み客を次のステージに勧めることです。
顧客ステージを定義した後に、次のステージに動かすために有効なチャネルが何かを考えるのが正しい順序。図のようにステージ毎に有効なチャネルをマッピングし、それぞれに施策を実施する。そしてコンバージョンなどを測定することで、施策の効果が検証できるのです。顧客ステージ設計、チャネル、施策のステップを理解できると、具体的にどこから行動すればいいかがわかるようになります。
KPI設定に必要な視点
- ハウスリストの件数(これまでのマーケティング活動で獲得したリード数)
- ハウスリストのうち、クッキー情報を取得できているリード数
- メール送付可能な件数
- マーケティングメールの送信数
- マーケティングメールの到達数
- マーケティングメールの開封数
- マーケティングメール経由のURLのクリック数
- オプトアウトの件数と送信1回あたりの解除率
- 各種マーケティング活動による獲得リード数と獲得単価
- 獲得リードのうち、過去に接触のないホワイトスペースのリード数
- 獲得リードのうち、ターゲット内のリード数
- マーケティング施策あたりの商談獲得単価
- マーケティング施策あたりの受注単価
マーケティングにおいて重要なのは「信頼を獲得し、長期的な関係を構築すること」。欲しい情報にたどり着けなかった、不要な情報ばかりが送られてくるといった状態が続くとオプトアウト(メルマガの登録解除)されてしまいます。基本的には獲得の面の方に注目しがちですが、長期視点でのKPI設定も重要です。
実践例
プロセスを理解したら、あとは行動あるのみです。自社ビジネスで実践していくには、顧客ステージを明確に定義したうえで、ステージ、チャネル、施策の概念を整理し、経営層から担当者レベルまで、それぞれがどの指標を見るべきかKPI整理する必要がある。ここでは、MAツールを使用した想定で、実際の業務をイメージしてみましょう。
(具体的な事例を作成中)
まとめ
- マーケティング部門は、あらゆる顧客ステージにおけるコミュニケーションの指揮者として、カスタマージャーニー全体をサポートする役割。
- マーケティングは従来測定しにくい部門であったが、現在ではオンラインで多くの情報を得られるように。顧客が確実にそのステージにいることを判定する客観的な指標を得ることがステージ設計のポイント
- マーケティング施策から考えるのではなく、ステージ設計をして、有効なチャネルを選定したのちに施策を考えるステップを踏む
- リード獲得に繋がる数値ばかりではなく、メルマガ登録解除数といった長期視点でのKPI設定が必要。
Work
- 自社のマーケティング部門の活動(顧客と接触するまで)の流れを洗い出してみましょう。
- 自社の顧客をTHE MODELのステージ設計に当てはめ、リサイクルに該当する顧客がどれくらい存在しているかを把握しましょう。
- 自社に合ったステージ設計を考えてみましょう
- 3や商品特性に合った、今後必要なKPIを洗い出してみましょう。
出典:
福田康隆『THE MODEL (MarkeZine BOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』翔泳社(2019)