SaaS全盛期のいま、サブスクリプション型のビジネスも私たちの生活のあらゆる分野に登場するようになりました。ユーザー側として使い方を理解していても、ビジネスとして生産性を最大化させていくには、従来の営業手法では限界があり、SaaS時代のフレームワークにアップデートが必要です。
そこで、今回は、SaaS・サブスク時代に必須のフレームワークである「THE MODEL」について、その概要や、必要な背景を解説していきます。
実際のビジネスですぐ応用するためのWorkも用意していますので、ご自身のビジネスと照らし合わせながら理解を深めることが出来ます。
この記事でわかること
- THE MODELとはどんなフレームワーク?
- THE MODELできた背景は?
- 今までの営業手法とどう違うの?
THE MODELの概要
THE MODEL:分業による生産性向上を実現する組織戦略のフレームワーク
具体的には、連続したKPIを可視化することにより、部門を越えたコミュニケーションを生み、再現性を持たせながら生産性を最大化するためのもの。マーケティング、インサイドセールス(テレアポなど)、フィールドセールス(営業)、カスタマーサクセスの4つの部門が共業して売上を最大化していくフレームワークです。
THE MODELが必要な背景
顧客の購買プロセスの変化以前は、サービス提供している企業や代理店に直接問い合わせ、営業担当者に合って情報提供を受けるやり方で、営業の人脈や代理店網の広さが差別化要因でした。現在は、情報収集・比較検討・意思決定といった購買プロセスのうち、前半の67%は営業担当者が接触する前に終わっているというデータがあります。顧客は自分の決めたタイミングで、自分が有益と思える情報を好みの方法で入手し、営業担当者にセールスされることなく自分のペースで進めたいと考えています。自分のことを理解してくれる企業から購入したいため、優れた顧客体験が重要な式決定の基準になるのです。顧客による調査・評価のプロセスが重要度を増していると言うことです。
※具体例:飲食店をグルメ検索サイトを使って予約する際、条件に沿った店舗を見つけて電話して、そのまま予約するケース。買い手と売り手が出会うその瞬間にはほぼ成約が決まってしまいます。
データ分析の変化情報管理も、SFAの利用のみだと、氏名・住所等の属性情報、営業が入力する商談情報くらいしか管理できず、主観が入ったり抜け漏れも発生していました。マーケティングオートメーションの活用で、オンラインの行動をトラッキング可能となり、ウェブサイトの訪問履歴や、動画の視聴履歴など様々な行動データを取得することができるようになります。顧客のデジタルシフトが進むほど、データ量が増え、精度の高い顧客プロファイル分析が可能となるのです。
営業効率改善の限界エクセルや営業の頭の中で管理されていた情報が、SFAの導入によって、商談件数の増加や受注率の向上に繋がるが、SFAは2割の受注率の組織を3割に引き上げるのが限界。改善はどこかで頭打ちのタイミングが来ます。さらなる売上増加には、営業人員を増やすか、商談単価を上げることだが、採用や育成など様々な要因があり、すぐに成果が上がるわけではありません。売上を2倍にするために必要なリード件数は4倍であり、効率改善だけでは達成が難しいのです。
新規顧客は永遠に増え続けることはないビジネスを続ければ続けるほど、新規リードの割合は減少して、「将来購買の可能性があるが、今すぐではない」という人たちや、失注した件数、営業のフォローが追い付かず放置された未フォローのリードも蓄積されていきます。そういった失注や未商談の顧客を対象に、リサイクル(循環)という流れができれば、リード獲得のコストもかからず、コスト圧縮できる可能性がある。その課題に対するソリューションとしてマーケティングオートメーションが登場するのです。
分業の副作用部門ごとに与えられた目標を分業して達成しようとすると、ビジネスが息詰まってきた際に、短期間で目標達成できる近視眼的な施策に走りがちになります。人間はグループに分けられたとたんに敵対しやすい生き物であるため、共同作業によって達成可能な共通の目標を設定し、共業されることが必要です。
その他にも、ビジネスモデルの変化(サブスクリプションモデルの台頭)在宅ワーカーの増加など、働き方の変化オンライン商談など営業手法の変化があげられます。
改めて、従来の営業プロセスでは、ビジネスの拡大に限界が出てきており、部門を越えたコミュニケーションによって生産性を再現性を持たせながら最大化する手法が必要です。
では、マーケティング、インサイドセールス(テレアポなど)、フィールドセールス(営業)、カスタマーサクセスの4つの部門が共業していくためにどうすればよいのでしょうか?
THE MODELを実戦で使うための「レベニューモデル」
これが、共業し目標を達成していくための最新のモデルです。
リードはいつか頭打ちになるという前提のもと、失注や未商談顧客をリサイクルするプロセスも組み込まれています。
また、サブスクリプションのビジネスが多くなっている中で、契約後も顧客を積極的にサポートするというカスタマーサクセスの概念も重要になっており、そのプロセスも手厚くなっています。それぞれのビジネスモデルにより、各プロセスは形を変えていくかもしれないが、広義ではどのビジネスモデルでも必要な考え方であり戦略なのです。
分業体制のメリットは、 最終的な売上だけを見るのではなく、各プロセスを担う部門のパフォーマンスを評価する 中間指標を設定し、どこがボトルネックなのかを把握し、すぐに対策が打てることです。
各プロセスの概要
- 認知拡大:ウェブサイトやプレスリリース、SNS等
- リード獲得:フォーム入力、名刺の獲得などを通じてコンタクト情報取得
- リード育成:情報提供によって育成育成対象外:ターゲットから外れるものにはパワーを割かない
- 有望リード:リードスコアリングやインサイドセールスによって、商談化できるかクオリフィケーション(あらかじめ設定した基準による検品作業)が行われる
- アポイント・訪問:営業が実施し、クオリフィケーションが正しいかを確認
- 商談
- オンボーディング:サービス提供や活用のフェーズコンサルティング・カスタマーサポート・トレーニング・コミュニティ・カスタマーサクセスが一体となって顧客体験を支えていく顧客満足度が高まると、アップセルやクロスセルにつながり、ロイヤルカスタマーがブランディングに繋がる評判を口コミで伝え、新しいリードや市場への認知に貢献してくれる。
- 顧客ステージの設計が適切に設定できれば、実際のオペレーションにて可視化・指標化しやすくスムーズに共業を行える。チャネル:顧客を次のステージへ動かすために、様々なチャネルを通じてコミュニケーションをとる施策・コンテンツ移行判定基準:顧客がどのステージにいるかを判断する基準
まとめ
- THE MODELは、今の時代のビジネスモデルに沿った、売上最大化のための再現性ある効率化の概念。
- THE MODELは、顧客の購買プロセスの変化や、データ分析環境の変化で、従来の営業手法に限界が生まれている背景から発生している。
- 実戦で活用するためのプロセスであるレベニューモデルには、従来はなかったリサイクルというプロセスが追加されている。
- 現在のマーケティング環境に合わせて解決していくソリューションツールとしてマーケティングオートメーション(24時間365日休まず働いてくれる有能なマーケティングと営業のサポート部隊)が欠かせなくなっている。
Work
- お客様情報(未受注のお客様(見込み客)、継続的にお取引のあるお客様(既存客)、過去に取引があったが現在は取引がないお客様(過去客))に関して、(1)誰が、(2)どんなツールを使って、(3)どのように管理しているか、全て洗い出しましょう。
- 見込み客や、既存のお客様、失注した過去のお客様などそれぞれに対して、(1)誰が、(2)どんなツールを使って、(3)どれくらいの頻度で、(3)いくら予算を使って、(4)何の目的で接触しているか、全て洗い出しましょう。
- 自社の営業活動モデルを図式化してみましょう
- 社内で管理しているKPIを図式に当てはめてみましょう
出典:
福田康隆『THE MODEL (MarkeZine BOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』翔泳社(2019)