マーケティングオートメーション

MAスペシャリストになるには?(2)MAスペシャリストの業務を具体的に解説!

この数年、マーケティングオートメーションという言葉がよく聞かれるようになってきました。マーケティングの考え方やアプローチ方法、ツールが日々進化し、多岐に渡る中で、活動の自動化や効率化を目指す流れがハイスピードで進んでいます。

日々のマーケティング業務が自動化されることで、新しいマーケティング施策に時間を割ける上に、業務の精度が向上し、売上増加も期待できます。

しかし、今後さらに拡大が見込まれるMA市場において、MAスペシャリストはまだまだ不足しています。本記事では、MAスペシャリストを目指す人に向けて、その役割や業務内容を解説していきます。

MAスペシャリストの主要業務

今回は、MAスペシャリストの主要業務から、データ要件定義、データマネジメント、コンテンツ設計、ツール設定について、具体的にどんな業務を行っているか、ポイントも踏まえて説明していきます

データ要件定義

データ定義とシナリオ設計。

データ定義

まず事業会社の保有するデータベースを把握し、事業会社全体のデータ連携図を作成します。多くの事業会社では複数のデータベースがあり、関連性のあるデータが分別管理されています。

確認項目としては、データベースの数・データ内容・データ更新方法や頻度・データ連携状況などです。データベース構成、データ連携の全体を把握できたら、施策実施に必要な項目を各データベースから選定し、データ項目定義として整理します。

シナリオ設計

データ定義に基づき、施策ターゲットの抽出処理を設計します。注意すべきポイントは「データ更新タイミング」と「処理負荷」です。データ更新の時間を把握し最新のデータが抽出できるような設計をし、データ量の多いデータベースや複数のデータベースを使用する場合、各データベースから必要なデータのみを抽出し、件数を絞ったデータを用いて、処理負荷を軽減します。一度にすべてのデータを使用して処理しようとすると、データ処理サーバーの負荷が高まり、抽出処理が途中で停止し、配信ミスやデータ処理ミスを招く可能性があるためです。

データマネジメント

ここでは、定めたデータ定義からデータ抽出処理や分岐条件、パーソナライズに使用するデータ処理が要件どおりに行えることを確認します。

施策ターゲットのボリューム

MAエンジニアに設定指示を行う前に、本番データを使用したテスト抽出を行います。データの欠損や抽出条件の考慮漏れを防ぎ、シナリオの想定件数と相違がないことを確認、配信ボリュームを確認することで、設定指示した後の手戻りをなくすなど工数削減にも繋がります。

コンテンツのパーソナライズデータ

コンテンツ制作担当者にパーソナライズで利用できるデータを提示し、コンテンツヘの反映可否を検討します。その後MAエンジニアにデータ定義に沿ったコンテンツ設定やデータ処理設定を指示します。事業会社が保有する顧客データの詳細を把握しておくのが大切です。

(例:メールコンテンツに、フルネームと誕生月を表示させたいが、データとしては苗字と名前が分かれている等)

シナリオ分岐・除外設定データ

顧客の属性や行動による経路分岐などを設定する場合、条件に必要なデータが存在するか確認し、データ加工処理を検討します。ここで重要な点は、設定要件を満たすデータ項目の選定と複数のデータから条件設定した場合の挙動確認です。些細なことかもしれませんが、例えば「かつ(AND)/または(OR)」を誤ると対象者が異なるため重大な配信・掲出ミスに繋がり、注意が必要です。



コンテンツ設計

コンテンツ全体はMAスペシャリストではなくコンテンツ制作担当者がシナリオプランニングに基づき制作します。MAスペシャリストの役割は、作成されたコンテンツがMAツールに問題なく設定できるか確認し、パーソナライズで使用するデータの準備、加工を行います。

氏名などの差し込みの他にも、フラグや数字の値によりコンテンツを出し分ける場合はデータ作成が必要になります。例えば、「昨日ウェブサイトを訪問し、商品購入した男性」「昨日ウェブサイトを訪問し、商品購入した女性」「その他」の3パターンでコンテンツの出し分けを行いたい場合です。指定された条件をそれぞれ指定することもできますが、1つの分岐に複数の条件が必要となるためツールの設定・確認工数が増えてしまいます。そこで複数の条件を1つに集約したフラグ項目を作成します。

作成したフラグに対応したコンテンツを設定します。出し分けのパターンが増えると設定も複雑になりますので、フラグに合わせて、どのコンテンツを表示させるのか対照表に整理していきます。

ツール設定

施策ターゲットの抽出、シナリオ分岐条件、コンテンツのパーソナライズなどで使用するデータ処理をMAツールに設定します。データ構築・設定はMAエンジニアの役割ですが、MAエンジニアが行った構築方法、処理内容を確認し、事業会社から本番公開の承認を得ることがMAスペシャリストの役割になります。

まずは、MAエンジニアが構築したSQLが依頼した内容を満たしているかを確認します。例えば取得するデータ項目に誤りが無いか(SELECT部分)、結合するデータベースに過不足は無いか(FROM部分)、また抽出条件を適切なデータベースから指定できているか、その指定条件で要件を満たせているか(WHERE部分)を確認します。

依頼要件と異なる場合、修正箇所を記載し、再度MAエンジニアに修正指示を行います。最終的に要件を満たすSQLが構築されたらデータ処理内容を事業会社の担当者に説明を行い、承認を得ます。

施策ターゲットやシナリオ分岐、メール・ウェブレコメンドなどのチャネルをMAツールに設定します。シナリオプランニングで定めた内容に基づきMAエンジニアが設定を行い、MAスペシャリストが確認します。


本番公開する前に、設定した内容すべてを確認する結合テスト実施により施策全体の最終確認を行います。結合テストでは、すべての確認項目や使用するデータを整理したテスト配信設計書を作成します。

結合テストを行った結果、施策ターゲットの抽出条件、分岐条件などが事前に想定した内容と異なる場合は、設定した条件、使用しているデータ項目の見直しが必要になります。結合テストは施策開始前のとても重要な工程になりますので、事業会社の責任者と本番開始前にどこまでを確認するかについて話し合い、双方の合意を得た上で、本番公開を行いましょう。

レポート集計

レポート集計におけるMAスペシャリストの役割は次の3点です

反応データ取得

施策開始直後の配信コンテンツに対する顧客の反応を判断することのできる指標で、その数値からコンテンツの良し悪しを確認します。

フォーマット作成

コンテンツごとの反応差を可視化、比較するためにレポートフォーマットを作成します。

結果チェック

集計結果をもとに、まず配信数増減に異常がないかなどのエラー発生有無を確認します。その後、早急に改善する箇所をチェックします。作成されたレポートを用いてエラーチェックとコンテンツの継続要否・改善判断を行います。

今回は、MAスペシャリストの業務や役割を具体的に見てきました。次では、MAの要でもあるシナリオプランニングについて説明していきます。

出典:
マーケティングオートメーション スペシャリストになるための教科書(マイナビ出版) 株式会社メンバーズ(福島信、鶴田純也、村上大典、廣瀬竜也、吉田隼)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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