マーケティングオートメーション

MAスペシャリストになるには?(1)MA市場とMA人材の必要性

この数年、マーケティングオートメーションという言葉がよく聞かれるようになってきました。マーケティングの考え方やアプローチ方法、ツールが日々進化し、多岐に渡る中で、活動の自動化や効率化を目指す流れがハイスピードで進んでいます。

日々のマーケティング業務が自動化されることで、新しいマーケティング施策に時間を割ける上に、業務の精度が向上し、売上増加も期待できます。

しかし、今後さらに拡大が見込まれるMA市場において、MAスペシャリストはまだまだ不足しています。本記事では、MAスペシャリストを目指す人に向けて、その役割や業務内容を解説していきます。

MA市場の拡大と人材の必要性

マーケティングオートメーション(以下、MA)とは、「事業会社が会社の資本や利益の追求、また売上に貢献するような施策を顧客行動に合わせて自動的に実行する仕組み」となります。部署ごとに行っていたマーケティング施策や業務を整理し、事業会社全体として1つの施策として設計することで、顧客属性・顧客行動に即した最適なタイミングで最適なメッセージを自動的に訴求できます。

システムの構成は以下の図のようになります。中心となる事業会社が、社内のシステム部門やマーケティング部門と連携し、MAツール会社、支援企業とともにMAを導入・運用していきます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのツールとして、MAに期待する企業も増えています。TVCMや新聞広告といったマスマーケティングの効果が減退しはじめている中、ウェブサイト、メール、アプリなどのオウンドメディアやインターネット広告を活用する企業が増え、それらのデジタルマーケティング施策を自動化するMAツールを導入することで、より効果を見える化することができます。

顧客のオンライン・オフライン行動を見える化し、興味・関心やアンケート結果などをデータ統合することで、その個々人に適したコミュニケーションを行うツールとしてMAに期待を寄せる企業が増えているのも事実です。

実際、MA市場規模の推移をみると、2018年から2019年にかけて、MAは37%増、DMP(データ マネジメント プラットフォーム)は24%増であり、この伸びはこれからも続くと予測されています。


このようにMA市場は拡大してきていますが、MA施策を実施しMAツールを運用できる人材は多くありません。経済産業省が昨年発表した調査によると、IT人材は2030年には45万人不足するとされています。

「IT人材白書2019」によれば、日本のIT企業IT人材(外部支援企業IT人材)は約94万人、ユーザー企業IT人材(事業会社IT人材)は約29万人となっており、他の先進国とは異なり、IT人材は外部支援企業に多く在籍しています。多くの事業会社においてMAに精通した人材の育成・確保は困難であり、MAツール導入・運用を外部支援企業に委託しますが、IT企業においてもMA人材は逼迫しており、事業会社と支援企業が一体となって、人材の育成をしていく必要があります。

MAスペシャリストの定義

MAスペシャリストの最大の役割は、事業会社の担当者とMAエンジニアを繋ぐことです。結果として、施策がミスなく予定通り開始されることがMAスペシャリストに求められる成果であり、そのためには、事業会社が考えるマーケティング領域とMAエンジニアが専門とするシステム・プログラミングの双方の知識を有し、円滑なコミュニケーションを行えることが必要なスキルとなります。

  1. 事業会社の施策要望を整理し、設定・開発要件を検討し、MAエンジニアに指示する。
  2. 設定・開発結果、検証結果を確認し、事業会社の承認を得て、施策を開始する。

MAスペシャリストの業務領域

ここでは、大きな業務の流れと、MAスペシャリストの役割や工程の全体像を見ていきます。

導入フェーズ:MAツール導入

導入事業会社が主体となり、実現したい施策要望に基づくMAツールを選定します。MAスペシャリストは実現可否やツール仕様説明、支援範囲の取り決めなどをサポートします。導入決定後は、初期設定としてセキュリティやアクセス権限、役割(ロール)などの環境構築、顧客管理システムからMAツールへのデータ連携、連携データから配信対象者を抽出・更新するデータ処理をMAエンジニアと共に行います。

要件定義・プランニングフェーズ①:シナリオプランニング

施策の目的や対象は、事業会社のマーケティング担当者が事業方針や顧客戦略に即して検討します。MAスペシャリストは対象者のセグメント・ターゲットの整理をサポートし、MAエンジニアと連携、ターゲットのボリュームなどを確認、シナリオ施策の優先度を助言します。

要件定義・プランニングフェーズ②:データ要件定義

MAスペシャリストが主体となり事業会社が保有するデータベースやデータ項目を整理します。施策に必要なデータ抽出設計やシナリオに含まれるデータ設計をMAエンジニアに連携します。

設計・実装フェーズ①:データマネジメント

MAスペシャリストとMAエンジニアが主体となり、データ要件定義で定めた内容の実現可否を確認します。MAスペシャリストは、施策ターゲットや配信コンテンツ、シナリオで使用するデータの実装可否をMAエンジニアに依頼し、結果を確認の上、事業会社によるツール設定開始の承認を得ます。

設計・実装フェーズ②:コンテンツ設計

事業会社がコンテンツ企画、ライティング/デザイン、審査を進めた上で、MAスペシャリストが主体となりMAツールでコンテンツを表現するためのデータ作成や設定をMAエンジニアと共に進めます。

設計・実装フェーズ③:ツール設定

MAエンジニアが主体となり、設計をMAツールへ実装します。MAスペシャリストは、MAエンジニアが実装した設定内容を確認し、事前に定めた設計内容、シナリオ要件と相違がないか確認を行います。

設計・実装フェーズ④:開始に向けた準備

MAスペシャリストが主体となりテスト準備を行い、事業会社と共に最終確認します。MAスペシャリストは、データ抽出、コンテンツ、シナリオにおいて抜け漏れが発生しないようテスト確認項目を整理した設計書を作成します。テスト結果検証後、リリース準備・開始処理を行い、シナリオを開始します。

計測・改善フェーズ①:レポート集計

MAスペシャリストが主体となり、施策の反応データを効率的に取得し、比較・分析するためのレポートフォーマットを事業会社とともに検討し作成します。また各施策で自動処理しているデータ抽出状況、配信状況にエラーが発生していないか確認し、定期的にメンテナンスします。

計測・改善フェーズ②:データ分析・インサイト発見

まず事業会社が主体となりKGI・KPIを定点観測します。MAスペシャリストは事業会社をサポートし、数値の変化を観察します。シナリオ改善のための現状のボトルネック調査では、事業会社とMAスペシャリストが協力して分析要件を決めます。

計測・改善フェーズ③:改善運用

事業会社とMAスペシャリストが協力し、データ分析で導かれたインサイトに基づき改善策を立案します。既存施策の売上を10%引き上げるなどの目標を決め、シナリオ、データ、コンテンツ全体の改善を設計し、追加の実装をMAエンジニアに指示します。

MAスペシャリストのキャリアパス

MA運用スキルを身につけることで、支援企業におけるキャリア形成だけでなく事業会社からも必要とされるスキルになります。

MAスペシャリストになると、まずアシスタントディレクターとして定常運用チームに配属され、基本作業を遂行できる主要ディレクターになります。次にデータスキルの習得や顧客ビジネスの理解などを経てMAシナリオ構築の主要ディレクターとなるまでに約3年を要します。

キャリアの育成は学生時代の勉強やその人が持つ素質なども重要で、簡単に育成できるものではありませんが、社会人になってはじめてITにかかわったとしても、中型案件の主要でディレクターは目指せるものです。

MAスペシャリストの必要性や、大まかな業務など、全体像を理解していただけたかと思います。次回は、主要な業務を具体的に解説していきます。

出典:
マーケティングオートメーション スペシャリストになるための教科書(マイナビ出版) 株式会社メンバーズ(福島信、鶴田純也、村上大典、廣瀬竜也、吉田隼)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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