カスタマーサクセス

カスタマーサクセスとは?(2)顧客体験をより良くするためのジャーニーマップ作成

サブスクリプション型ビジネスが普及してきたいまの時代は、商品やサービスを売るだけではなく、顧客に価値を提供しつづけることがとても重要になってきました。

そこで、今回は、サブスク型ビジネスにおいて必須な「カスタマーサクセス」という役割について、概要と実践方法を解説していきます。

この記事でわかること

  • カスタマーライフサイクルとは? ライフサイクルの5つのフェーズ
  • ジャーニーマップの目的と、作成すべき理由

カスタマーライフサイクル

カスタマーライフサイクルとは、特定の顧客のマネジメントプロセス全体を意味します。通常、フェーズは5つに分けられ、各フェーズが全体の成否に影響します。

最も一般的に使われているフェーズ名は、「検討または評価」、「成約」、「オンボーディング」、「アダプション」、「契約更新/拡販」ないし「チャーン(解約)」です。

検討または評価

顧客が課題解決に向けたサービスの比較検討を行うフェーズ。広告で自社製品のメリットを訴求するなど、通常はマーケティングの業務範囲ですが、営業が加わることもあります。

購買(契約締結)

商品やサービスの選定と契約交渉を行うフェーズ。基本的に営業の仕事ですが、カスタマーサクセスマネジャーがアドバイザー的に参加することもあります。

オンボーディング

設定を行いユーザーがサービスを使いこなせるようにするフェーズ。サービスの複雑性に応じて、オンボーディングチームまたはカスタマーサクセスマネジャーどちらかが担当します。このフェーズは顧客が商品やサービスに習熟するまで続きます。

アダプション

顧客が商品やサービスを使いこなしていくフェーズ。カスタマーサクセスマネージャーがリードします。顧客が商品やサービスによって成果を上げられれば、見込み客や他の顧客に推薦してくれる可能性があります。

また、このフェーズでは、顧客が商品やサービスを追加導入したり、ライセンスやユーザー数を増やしたりすることもあります。(これらは「アップセル」や「クロスセル」と呼ばれます。)

契約更新/拡販

顧客がサービスの継続利用や契約拡張を決めるフェーズ。アダプションと同様に、カスタマーサクセスマネジャーが担当することが多いです。

サービスをうまく活用している場合、他の商品やサービスを提案してさらなるメリットを提供できる可能性もあります。ヘルススコアに注意を払い、より良い顧客体験を提供してこの状態を維持します。

チャーン(解約)

顧客がサービスの利用中止を決めた時のフェーズ。こちらもカスタマーサクセスマネージャーが担当することが多いです。

このフェーズで特に重要なのは、解約を把握すること(後ほど詳しく説明)と、解約のプロセスを出来る限りシンプルにすることです。解約の際に「嫌な思い」をさせず、いつか戻ってくれる可能性を少しでも残しておくべきでしょう。

ジャーニーマップ

ジャーニーマップとは、商談からはじまり契約更新/拡張まで続く顧客の過程を示すものです。カスタマーサクセスの最終的なゴールまでのいくつかの中間目標で構成され、顧客の進捗をひと目で把握できるように作られています。

カスタマーライフサイクルの各フェーズに対応したジャーニーマップを作成することで、各ステップやイベントがクリアになります。また、カスタマージャーニーの全体像をプランニングすることになるため、潜在的な問題に気づきやすいのもメリットです。

作成の目的

  • カスタマージャーニーの進捗確認:顧客のゴールまでの道のりと、現在どこに位置しているかを把握できる
  • 担当部署や責任の明確化:顧客のゴールに向けた最適なステップが定義されることで、次のステップに引き渡すための担当部署や責任の所在が明確になる
  • 引継ぎの質の向上:各ステップで発生するタスクの責任を負う部署がどこかが明確になるため、次のステップへの移行、つまり部署間の引継ぎがスムーズに行える

作成時の注意点

  • メンバーが実際に顔をあわせて、ホワイトボードや付箋などを用いて行う
  • 書き出したプロセス全体を吟味、熟考し、ジャーニーマップへの合意を形成する
  • 顧客の視点、立場でマップを作成する

ジャーニーマップはなぜ必要?

明確なジャーニーマップがなければ、ゴールや道すじが曖昧なゆえに顧客とのやりとりが場当たり的になり、本当に必要なものをカスタマーサクセス担当が提供することができません。

また、カスタマ―ジャーニーに統一性が欠けることで、顧客ごとの体験が異なり、カスタマーヘルス全般に悪影響がおよぶ可能性も出てきます。

一貫性のある確かなジャーニーマップを用意することで、このような事態を予防し、すべてのチームが各顧客のジャーニーを念頭に対応できるようになるため、顧客により良いカスタマージャーニーを体験してもらうことが可能になります。

まとめ

  • カスタマーライフサイクルに対応したジャーニーマップを作成することで、顧客のマネジメントプロセスの問題点に気づくことができる。
  • カスタマージャーニーに統一性を持たせることで、部署間の連携がスムーズになり、より良い顧客体験を提供できる。

出典:
アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン、ルーベン・ラバゴ『カスタマーサクセス・プロフェッショナル‐顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』英治出版(2021)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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