カスタマーサクセス

カスタマ―サクセスとは?(5)フィードバックの活用とテックタッチ戦略

サブスクリプション型ビジネスが普及してきたいまの時代は、商品やサービスを売るだけではなく、顧客に価値を提供しつづけることがとても重要になってきました。

そこで、今回は、サブスク型ビジネスにおいて必須な「カスタマーサクセス」という役割について、概要と実践方法を解説していきます。

この記事でわかること

  • 顧客からのフィードバックの収集、分析方法
  • 顧客管理を効率化するためのテックタッチ戦略

この記事では、顧客からのフィードバックを傾聴して対策に反映する手法と、最小の手間で広範な顧客にリーチするためのテックタッチ戦略について紹介します。

フィードバック活用の4ステップ

まずはフィードバックのプロセスをおさえましょう。

STEP①:フィードバックを収集する

ヘルススコアの記事でも紹介した、ネットプロモータースコア調査が非常に有効な手法です。全カスタマーを対象に、半年ごとに実施しましょう。意思決定者にはメール調査が適していますが、エンドユーザーに対しては、時間の面からも業務の一環として対応できる点からも、プロダクト内蔵型にすると回答率が上がる傾向にあります。

STEP②:フィードバックをした顧客に対応する

顧客からフィードバックを受けたら、必ず対策をとらなければならなりません。上得意な顧客には個別に連絡してインプットへの謝意を伝え、小口の顧客には自動化された対策をとると良いでしょう。

回答に基づくタイプごとの対応

  • 推薦者タイプ:サンキューメールの送付と合わせて、顧客紹介プログラムへの参加を打診します。
  • 中立者タイプ:サンキューメールを送る際に、詳細をヒアリングする機会を依頼することをおすすめします。状況によってはサービス利用状況に関するブログ記事やニュースレターへのリンクを提案として記載するのも一案です。
  • 批判者タイプ:とにかく早い対応が求められます。まずは、フィードバックを真蟄に受け止めたとするフォローアップメールを送ります。回答に対して丁重に質問して、内容を深掘りし、必要であれば、直接話を聞く機会をもらえるよう打診します。

STEP③:情報を分析する

フィードバックやフォローアップで情報を収集したら、きちんとデータを分析し、顧客志向になるための洞察をすることが重要です。調査の回答に共通するトレンドやキーワード検索に関するテキストアナリティクス機能や、サービスや機能、(サポートやカスタマーサクセスなどの)サービス、提供された価値に関するキーワード検索を活用してみると良いでしょう。(下図参照)


また、サービスのリリースやトレーニングなどのマイルストーン通過後の状況変化について、時系列で傾向を追うのも有用です。

STEP④:分析結果を実務に活用する

最後のステップでは、より顧客志向な企業をめざして洞察を活用し、各部門の業務改善または組織を横断した協力体制の強化を図っていきます。

例えば、ネットプロモータースコアが悪い原因として、同じような回答が多く見られた場合は、関係部門またはチームに共有し、しかるべき改善を要請します。

  • ユーザーインターフェイスが悪い:プロダクトチームに知らせる
  • オンボーディングプロセスガ複雑:プロセスを再設計する必要である。

また、事例分析としてまとめて全社に共有するのも良いでしょう。ネットプロモータースコアと会社の業績との間に相関が見られる場合、こういった情報共有は特に重要です。

フィードバックの隠れた価値

顧客からのフィードバックにおいて重視すべきは、スコアや一つ一つのコメント、回答の有無などの個別データではなく、近しい要素を組み合わせることで浮かびあがってくる洞察です。例えば、リレーションシップスコアは低いが特定の機能についてのコメントがポジティブな場合、価値を実現できていない可能性を疑うべきです。

サービス、チャーンの予測、ステークホルダーのエンゲージメント、新規のビジネスチャンスなど、フィードバックには無限の用途があるので、フィードバックから得られた手がかりをパターン化し、洞察した後、具体的アクションに落とし込んでいきましょう。

テックタッチ戦略

小口の顧客は、一社一社の収益規模は小さいものの、その数自体が多いため、一つの集合体とみなしたときにはかなり収益規模の大きい取引先となります。この集合体を、「ロングテール」と呼びます。

このロングテールに対して、カスタマーサクセスマネージャーが手をかけすぎて収益性を下げてしまわないためには、テックタッチ戦略が有効です。

「テックタッチ」(または「ロータッチ」)とは、顧客へのコンタクトを基本的に自動化、デジタル化し、人間が関わるのは本当に必要な時にかぎる手法です。ロングテール顧客に対してテックタッチ戦略を適切に実行すれば、顧客を自動化したプロセスで効率的に管理できるようになります

そうすることで、普段は人の手をかけずに多数の顧客をマネジメントし、ここぞという局面では隠れたリスクや契約拡張の機会を発見することができるようになります。

ここからは、最も一般的なテックタッチの対応策を、オンボーディング、契約更新、リスクマネジメント、推薦のマネジメントの各取り組みごとに紹介します。

オンボーディング

セットアップが比較的容易だったり、週や月単位でなく日単位でオンボーディング可能なサービスを扱う場合は、オンボーディングのワークフローにテックタッチ戦略を取り入れるべきです。自社と顧客にとって最適なオンボーディングのワークフローは、以下のとおりです。

  • 成約直後に、担当として挨拶がてら、これから数日間に双方が何をしなければならないかをメールで連絡する。
  • 万が一、顧客がメールを開かず、記載したリンクをクリックすることもなければ、ただちに担当者が介入して軌道修正する。成約の直後は、双方が関係構築に前向きかつ勢いのある時期なので、適切にコンタクトをとることがきわめて重要。
  • 2日ほどたってから、商品やサービスの導入トレーニングの案内をメールする。この時、技術的な問題に備えて、サポートの電話番号やテクニカルサポート関連のリンクも送っておく。
  • 想定どおりの進捗が見られたら数日後に、インストール説明書などの、ダウンロード設定の際に利用できる資料をメールする。
  • 設定が完了しサービスの利用が始まったら、メールまたはサービス内でのポップアップで、ベーシックな機能を利用する際のアドバイスを送る。
  • 「日常的」にサービスを利用し始めてから1~2週間経過したあたりで、利用に対する謝意のメッセージを送る。もしオンボーディングプロセスのどこかで中断している場合には、リマインダーを送付する。それでも状況が変わらなければ、担当者が直接連絡してオンボーディングを促す。
  • 最後に、メールまたはサービスのポップアップなどで顧客満足度調査を実施し、ここまでのジャーニー体験は満足のいくものだったかを確認する。

契約更新

サブスクリプションビジネスを展開している企業にとってもう1つの重要なワークフローが、契約更新です。契約更新の際に参考となるワークフローは以下のとおりです。

  • 契約更新の90~120日前には、メールやサービスのポップアップ機能で必ず顧客に連絡し、リマインドする。メールを送付する際に、契約更新について「可能性は低い」、「未定」、「可能性は高い」という選択肢を用意し、簡単なアンケート形式で確認するなども良い。
  • 顧客がメールを開いてくれなかったり質問に回答してくれない場合には、解約リスクがあるとみなして人が介入する。「可能性は低い」または「未定」との回答に対しては、カスタマーサクセスマネジャーからコンタクトしてフォローする。
  • 60日前にメールまたはサービスのポップアップで再度リマインドする。割引やイベントチケット、無料サービス、トレーニングなどを(特に「未定」と回答した)顧客に提示して、早めの契約更新を促す。
  • 最後に、無事契約が更新されたら自動的に顧客へのサンキューメールが送信されるように設定しておく。

リスクマネジメント

小口顧客のリスクマネジメントに対して、自社商品やサービスの利用状況が大幅に鈍化した、あるいは何日間もログインされていない場合などには、テックタッチで対処します。以下、リスクマネジメントをテックタッチで行う際に有効な手段をいくつか紹介します。

  • 30日単位で、商品やサービスの利用状況が鈍化している顧客を特定し、彼らに現状を伝えるとともにカスタマーサクセスマネジャーに相談してはどうかとメールで提案する。
  • 数日後、サービスの利用事例や活用方法の改善案をメールでフォローアップする。この時、新しいサービスリリース情報も案内し、利用を再度促する。
  • 改善が見られたら、メールまたはサービスのポップアップ機能で、利用が進んだ機能のどれを便利だと考えているかを調査する。(今後、顧客にどの機能を提案したら最も価値を実感してもらいやすいかを把握する上で、重要な情報になる。)
  • 2週間待ってもメールを読んでもらえず、利用状況も改善しない場合は、カスタマーサクセスマネジャーの方から連絡する。

推薦のマネジメント

サービスの価値を実感した顧客には、周囲におすすめしてくれるよう依頼することも十分可能です。小口顧客の場合はワークフローをテックタッチにすると効率的です。以下は、ネットプロモータースコアや顧客満足度調査の回答を受けてのテックタッチ戦略の例です。

  • 回答がネガティブだった場合は、カスタマーサクセスマネジャーがフォローアップして状況を理解する。
  • 回答がポジティブであれば、会社を推薦してくれる意志を伺う質問をメールやサービス内のポップアップで伝えるよう設定しておく。
  • 調査に協力し推薦にも同意してくれた顧客に対して、ギフトカードなどを送って具体的に謝意を伝えるようにする。
  • メールを開いたものの回答がない時や部分的に回答するに留まる場合はリマインダーを送るように設定しておく。

ここまで、顧客からのフィードバックを活用する手順と、効率的に顧客を管理する方法を紹介しました。カスタマージャーニーを戦略的にデジタル化することで、より多くの顧客にリーチできるようになります。次の記事では、さらに範囲を広げて、カスタマーサクセスのプロセスについて紹介します。

まとめ

  • 顧客にサービスや体験に満足してもらうためには、フィードバックを有効に活用することが重要。
  • 顧客からのフィードバックは、カスタマーサクセスだけでなく組織全体で共有、活用するべき。
  • テックタッチ戦略を適切に行うと、小口の顧客に手をかけすぎてカスタマーサクセスチームの収益性を下げることを防止し、より多くの顧客にリーチすることできる。

出典:
アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン、ルーベン・ラバゴ『カスタマーサクセス・プロフェッショナル‐顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』英治出版(2021)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

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