オンラインで業務を完結できる時代となり、従来は訪問するのが当たり前だった営業や契約に関しても、オンラインで完結することも珍しくなくなってきました。
一方で、顧客から訪問を求められる、オンラインだけでは契約まではハードルが高いというケースもまだまだ見受けられます。そこで今回は、インサイドセールスの実践方法について解説していきます。
【役割別】KPI設定事例
ここでは「SDR」「BDR」「マーケティング」それぞれのKPIの設定方法をおさえましょう。
SDRのKPI
SDRはインバウンド対応がメインとなりますので、まずはリード数を中心に見ていきます。
インサイドセールスのチェック項目(SDR)
- リード数(有効リード数、リードソース別のリード数)
- リードのフォロー完了率
- 各リードからの商談獲得率
- 架電数(着信数)
- メール送信数(到達数、開封数、URLのクリック数)
- 架電数とメール送信数を合計したアクション数
- 商談獲得件数
- 商談獲得金額
- 有効商談数(商談化数)
- 受注件数
- 受注金額
商談獲得数はもちろん重要ですが、やはり有効商談数に注目すべきです。成約を目的とする組織ですので、商談獲得だけで満足することなく、健全性を確認するためにも商談化数は極めて重要と言えます。
BDRのKPI
BDRはアウトバウンドがメインとなるので、そのもとになるリスト数が重要です。BDRのアプローチはその特性上、1社ごとに調査と仮説構築、実際のアプローチと多くの工数が必要となります。商談獲得までの時間も SDRに比べて長く必要となるため、常にCXOレターなどのアプローチを続けていく必要があります。
インサイドセールスのチェック項目(BDR)
- 営業と合意したターゲット企業のリスト件数
- ターゲットリストのうちのアプローチ完了率
- リード数(有効リード数、リードソース別のリード数)
- CXOレターの送付数
- 架電数(着信数)
- メール送信数(到達数、開封数、URLのクリック数)
- 商談獲得件数
- 商談獲得金額
- 有効商談数(商談化数)
- 受注件数
マーケティングのKPI
つづいてはマーケティングのKPIをみていきましょう。
マーケティング部門のチェック項目
- ハウスリストの件数(これまでのマーケティング活動で獲得したリード数)
- ハウスリストのうち、クッキー情報を取得できているリード数
- メール送付可能な件数
- マーケティングメールの送信数・到達数・開封数
- マーケティングメール経由のURLクリック数
- オプトアウトの件数と送信1個当たりの解除数
- 各種マーケティング活動による獲得リード数と獲得単価
- 獲得リードのうち、過去に接触のないホワイトスペースのリード数
- 獲得リードのうち、ターゲット内のリード数
- マーケティング施策あたりの商談獲得単価
- マーケティング施策あたりの受注単価
マーケティング部門は一般的なリード獲得数や獲得単価はもちろんですが、注目すべき指標は「オプトアウト(メルマガの登録解除数)」です。BtoBマー ケティングにおいて重要なのは「信頼を獲得し、長期的な関係を構築すること」です。欲しい情報にたどり着けなかった、不要な情報ばかりが送られてくるといった状態が続くとオプトアウトされてしまいます。これはマーケティングリードを1件失う、ということだけではなく、信頼を段損したことになります。
【フェーズ別】KPI設定事例
インサイドセールス部門のフェーズごとのKPIの設定方法について解説します。
立ち上げ初期
立ち上げ時に重視すべき指標は「商談獲得数」です。重要なのは、そのPDCAサイクルをより高速で回すことで正解のサンプルを蓄積し、最速で正解を見つけることです。そのためにはより多くのサンプルが必要で、いきなり質にこだわると初速が遅く、正解にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。まずは量に振り切ることです。
そこで重要になってくるのが「営業側との商談品質の合意」です。立ち上げ初期は量にフォーカスしてとにかく多くの商談を共有するため、中には品質の低い商談も含まれてしまいます。事前に営業側と「量に振り切るために品質の低い商談が紛れてしまう可能性がある」ということをしっかり伝えておく必要があります。
加えて「質を上げていくために忌憧のないフィードバックが欲しい」と伝え、実際に商談機会なし となった商談については詳細なフィードバックをもらうようにしましょう。ここのコミュニケーションをしっかりやっておけば営業側と無用な摩擦を避けることができますし、「インサイドセールスが発足したはいいが、良い商談につながらない」といった問題を避けることもできます。
立ち上げ中期
中期では「有効商談数(商談化数)」を重視します。今まではとにかく時間をもらえるお客様全てから商談の機会を頂戴していたと思いますが、中期は本当に必要なものだけを商談として営業に渡します。
ここで重要なのが、単にKPIを設定するのではなく、有効商談の定義の見直しを行うことです。実際に成約した企業や商談内容の定性・定量分析を行い、営業と肌感覚に相違がないか確認し、改めて有効商談の条件設定を行っていきます。
立ち上げ後期
立ち上げ後期の目安は、商談化率75%以上(設立から2年後くらい)です。組織が安定的に成果を出せるようになってきたらKPIをさらに後ろに移して「成約数」をKPIに設定します。
まとめ
今回は、インサイドセールスの役割やフェーズ別のKPI設定に関して解説しました。みなさんも、自社の体制・導入段階や商品サービス特性を鑑みて、適切なKPIを設定していきましょう。
次回は、本シリーズの最後となる、実務で即使えるテクニックについて解説していきます。
出典:
茂野明彦『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』株式会社翔泳社(2020)