インサイドセールス

サブスク時代に必須の営業手法、インサイドセールス(1)自社に合ったインサイドセールスとは?

オンラインで業務を完結できる時代となり、従来は訪問するのが当たり前だった営業や契約に関しても、オンラインで完結することも珍しくなくなってきました。

一方で、顧客から訪問を求められる、オンラインだけでは契約まではハードルが高いというケースもまだまだ見受けられます。そこで今回は、インサイドセールスの概要や実践方法について解説していきます。

インサイドセールスとは?

インサイドセールスとは、相手先を訪問しない内勤型の営業のことを言います。見込み顧客(リード)に対して、電話やメール・ビデオ会議システムなどを用いて営業します。

よくテレアポと混同される場合も多いのですが、テレアポはインサイドセールスの営業手段の一つであります。リードとの関係構築をしながら商談を進めていくのがインサイドセールスです。

インサイドセールスが求められる背景

ではなぜいま、インサイドセールが求められているのでしょか?

購買行動の変化

ここ数年、デジタルマーケティングの進化により、顧客の購買行動は大きく変化しています。皆さんが飲食店を予約する際、希望に沿う店が見つかって電話をする瞬間、そのまま予約する人がほとんどでしょう。つまり、買い手と売り手が出会う瞬間にほぼ成約が決まっているということであり、「最初に検索し、情報収集を繰り返して出会ったときには購買の57%の購買プロセスが完了している」状況なのです。

これはBtoCに限った話ではなく、BtoBでも同様の変化が起こっています。法人が課題を解決しようと考えた場合、まず取る行動は”営業に会う”というものでした。デジタルマーケティングへの投資が加速すると、商談機会の獲得に至らないものが増え、結局受注コストが増加するという新たな問題に直面しました。

それは、マーケティング活動で獲得したリードが活用されていないことが要因で、従来の訪問型の営業手法だと、温度感の高いもののみアプローチしていき、リードのフォローが後回しや放置されてしまうのです。そこで、スペシャリストであるインサイドセールスが必要になったのです。

サブスクリプションの台頭

サブスクリプションモデル(以後、サブスク)とは、現代の新しいビジネスモデルの総称で、「継続課金型の購買モデル」です。初期コストが大きく検討にも時間が必要でしたが、サブスクは利用者が早く、安く始めることが可能で、かつ継続的なアップデートによる新機能の 恩恵を受けることが可能なサービス提供形態です。

サブスクは継続的な機能開発や、売り切り型ではないために契約の継続交渉、契約期間中のライセンスの追加契約など、今までよりも複雑かつ膨大な業務が生じ、営業だけでは対応が難しくなりました。

また、従来は莫大な投資が必要なためオンラインでは完結することができなかったものが、サブスクでは契約自体をオンライン商談で完結することが可能となります。

これらの業務量の増加やオンライン商談への移行もあって、サブスクの台頭がよりインサイドセールスの需要を拡大させたと言えます。

働き方の変化

生産年齢人口の減少や、働き方改革の影響で、在宅ワーカーが非常に増えています。子育てや介護、様々な理由でオフィス勤務は出来なくても、在宅であれば勤務可能な方を多くの企業が採用し、新たな労働力として雇用が進んでいます。

その在宅ワークに最適な職種がインサイドセールスなのです。最低限、パソコンとスマートフォンがあれば業務が可能で、今までは子育てや介護などでキャリアを中断せざるを得なかった人が、活躍している事例も多く聞かれます。

また、新型コロナウィルスの影響で、さらに在宅勤務が加速し、今後も在宅ワーカー、インサイドセールスへの需要は拡大していくでしょう。

営業は足で稼ぐという時代から、CRMやMAツールなど、テクノロジーを駆使した営業へと変化してきました。テクノロジーの進化の後押しもあり、インサイドセールスが強く求められるようになります。

インサイドセールスの重要な役割

インサイドセールスは、将来のお客様が出会う最初の接点であるため、会社の代表であり、その体験が企業の評価に直結すると言えます。だからこそ、カスタマーサクセスを実践すべき部門であり、これが抜け落ちた瞬間に単なるテレアポと化します。

リードをフォローして商談化するという役割だけでなく、顧客は検討段階でどのような課題を抱えているのか、自分がどのような情報提供やアプローチをするのが最も良い顧客体験を提供できるのかを模索し、会社のメッセージ、製品の内容を正しく市場に伝えることも重要な役割です。

働き方の変化や、サブスクリプションの台頭による対面型営業のコストパフォーマンスの悪さ、非対面ツールの充実により、ますますインサイドセールスの需要が拡大していきます。従来のフィールドセールスだけでなく、カスタマーサクセスをサポートし、自社の売り上げに欠かせないスペシャリストとしてのインサイドセールスが求められています。

インサイドセールスの種類

インサイドセールスには、大きく分けて3種類存在します。

  1. 問い合わせからお客様との商談の機会(以後、商談機会)を創出するSDR(Sales Development Representative)
  2. ターゲット企業を選定し、主に手紙やアウトバウンドコールによって商談機会を創出するBDR(Business Development Representative)
  3. そして客先に訪問せずにオンライン商談を進め、最終的な契約締結までを行うオンラインセールスです。

商材の金額や、企業規模によって、上記の役割の必要性も変わってきます。

特にオンラインセールスは、新型コロナウイルスの影響で一気にその認知度を拡大させ、それまでは難しいとされていた大手企業へ の営業活動もオンライン商談で代替できるようになりました。 オンライン商談の特徴は生産性の高さです。往復の移動時間がゼロになったおかげで、一日の商談可能な件数も増加しました。

インサイドセールスの配置の型

インサイドセールスの配置には大きく分けて分業タイプ、独立タイプ、混合タイプ の3つの型があります。

商談のパスだけを行う分業タイプ

SDRとBDRだけを配置する場合はこの分業タイプにあたります。例えばメーカーなどのオンライン商談が不可能な業種や、大手企業がメインターゲットの企業で は主にこの分業タイプを選択します。 分業タイプの最大のメリットは生産性の向上です。営業が1人で商談獲得から成約ま で担っていた先発完投型の組織と比較すると、単一業務に集中することで特化したスキルアップが期待できます。

商談の成約までを完結する独立タイプ

SDRとBDRに加えてオンラインセールスをインサイドセールス部門内に配置するタイ プを独立タイプと呼びます。独立タイプは、主に低単価の商材を扱う企業や、ター ゲット企業が中小ベンチャーの場合に選択されることが多く、比較的商談期間の短い 製品を扱う企業に向いています。独立タイプのメリットは「自部門内ですべてが完結できる」ことにあります。例えば 予算設計や人員配置、商談の条件設定や変更が柔軟で、他部門との連携コストが低くなります。一方で部門内に役割が増えることで教育コストは増大し、採用難易度もオンラインセールスが加わることで格段に上がります。

ターゲット企業の規模や地域によって分ける混合タイプ

ターゲット企業の規模や地域が多岐にわたる企業の場合には混合タイプのインサイドセールスを配置します。例えば「大手企業から中小企業まで幅広い層をターゲットにしている」「日本全国の企業を相手に事業を展開しているが、大都市にしか営業拠点がない」といった企業です。つまり、大手企業は分業タイプで商談の獲得までを担い、中小企業はオンラインセールスで成約までを完結してしまう、といった対応です。一見するとメリットばかりのような混合タイプですが、その最大のデメリットは業務や予算策定における設計難易度が圧倒的に高いということです。それと同時に相対する 部門によって予算や商談の獲得条件が変わってくるため、連携コストも増大します。

どのような組織体制が最適なのか

まずは横軸に提供製品・サービスをおき、単価(高単価、低単価)で分類し、さらに売り切りモデル、継続モデルの2つに分類していきます。そして縦軸には対象顧客を個人か法人に分類し、そして大企業か中小企業か、若年か老年かに振り分けていきます。

大手企業向けの高額製品の場合は分業タイプが最適です。大手企業に対して高額製品を販売する場合、複数の担当者と複数回にわたり商談を続ける必要があり、これを オンライン商談に切り替えるには難易度が高く、逆に成約率や生産性を下げてしまう可能性があります。

一方で、売り切りモデルの低単価の製品を中小企業に販売する場合は独立モデルで十分対応が可能です。単価が低い製品の場合は、移動の時間や交通費を削減し、かつ商談件数も増やせることから成約率が向上しなくても売上 を増大させることが可能になります。このように自社の製品やターゲット企業によっ てスタイルをうまく合わせることで、売上や利益を引き上げることが可能です。

まとめ

インサイドセールスがなぜ今必要なのか、どんな役割が求められているか、その重要性を理解できたと思います。また、実践していくうえで、自社の製品やサービスにはどのようなインサイドセールスが必要かを確認できたのではないでしょうか。

次の実践編では、実際の業務や運営におけるポイントを具体的に解説していきます。

出典:
茂野明彦『インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』株式会社翔泳社(2020)

芝先 恵介

芝先 恵介

外資系業務ソフト会社より、仲間4人とともに2002年独立し代表就任。ウェブのシステム開発、広告代理店を始める。2013年同社を売却。 2014年からフリーランスでスタートアップ、大企業の新規事業立ち上げ支援を開始。2016年に訪日外国人×地方創生を行う株式会社トラベルテックラボを大学院の仲間と設立。その他、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や、公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、エンジェル投資家など

関連記事

TOP